口もない、胃もない、脳もない。でも「動物」

今から約6億年前、「エディアカラ紀」と呼ばれる時代に、地球で初めて大型の「動物」が現れました。教科書でおなじみの「カンブリア爆発」――動物の種類が爆発的に増えた大イベント――の少し手前にあたる時代です。
ただし、この時代の「動物」は、私たちが想像する動物とはまるで別物でした。
たとえばフラクトフススという生き物はシダの葉っぱそっくりの姿で、海底にじっと立って生活しており、口も胃も脳もありませんでした。
それなのに大きいものは身長2メートルにまで育ちます。
海水に溶けた栄養を体の表面からじわじわ吸い取るだけで生きていたと考えられています。
海藻と見間違えそうな暮らしぶりですが、それだけではありません。
彼らにはもう一つ、奇妙な特徴がありました。
イチゴを育てたことがある方なら、あの植物が地面につるを伸ばして、その先に小さな新しい株を作って増えていく光景をご存じでしょう。
最古の動物たちも、まさにこのイチゴと同じ方法で増えていたのです。
親から細い糸が伸び、その先にクローンの子ができる。子は親とつながったまま、栄養を分け合って生きていました。
しかしそんな「穏やかでヘンテコな動物」に満ちたエディアカラ紀には、古生物学者を悩ませてきた別の問題がありました。
エディアカラ紀に登場した大きな動物たちは、そこから約1600万~2600万年ものあいだ、種の数がほとんど増えなかったのです。
化石の記録からも、ほぼ同じ顔ぶれが長期間にわたり、大した変化もなく存在し続けたことが知られています。
他の地質時代ならばこの間に「恐竜が滅び、巨鳥が現れ、哺乳類の時代が来る」という激変がありますが、この時代はそういう劇的な変化がみられなかったのです。
しかし、ある時を境に突然、種の数が跳ね上がります。
有名なカンブリア爆発が到来したからではありません。
そうなる前のエディアカラ紀の末期に、奇妙な動物たちのバリエーションが一気に増えたのです。
この「長い停滞→突然の爆発」という落差が、古生物学者たちをずっと悩ませてきた謎でした。
そこでミッチェル博士とアンドレア・マニカ教授は、これまで誰も正面から取り組んでこなかった切り口でこの謎に挑みました。
着目したのは、最初の動物たちの「子作りの方法」でした。化石の並び方を細かく調べれば、その動物がどうやって増えていたかが読み取れるのです。





























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