土の物質に反応して「光るバクテリア」を開発
研究チームはまず、バクテリアが放出できる光のパターンを理論的に予測しました。
自然界に存在する約2万種類の分子について計算を行い、最もユニークな光のスペクトルを持ち、かつバクテリアが作りやすいものを選び出しました。
その結果、「ビリベルジンIXα」と「バクテリオクロロフィルa」という2種類の分子が有力候補に選ばれました。
次に、これらの分子を作り出すための酵素遺伝子を、土壌細菌である「シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)」と水生細菌の「ルブリビバクス・ジェラティノサス(Rubrivivax gelatinosus)」に組み込みました。
さらに、これらのバクテリアに土壌の栄養素や汚染物質を検出するためのセンサー回路を組み合わせました。
これにより、バクテリアは周囲の環境を感知すると、独特の光を発するようになったのです。
加えて、この光はドローンや建物の屋上に設置したハイパースペクトルカメラで最大90メートル離れた場所から検出することができました。
テストでは、農地や砂漠、建物の屋上など、さまざまな環境に設置した箱の中にバクテリアを展開し、20〜30秒で4000平方メートル以上の範囲をスキャンできました。

さらに驚くべきことに、この方法は既存のセンサー技術とも組み合わせが可能で、たとえばヒ素の検出にも応用できることが示されました。
これまで、土壌の健康状態をこれほど簡単に、しかも広範囲にわたってモニタリングできる手法は存在しませんでした。
見えなかったものを”光”で可視化する。
MITの研究チームが開発したこのバクテリアは、農業だけでなく、環境モニタリングや防災、安全保障など幅広い分野での応用が期待されています。
近い将来、ドローンで飛びながら、土壌の健康状態をリアルタイムに把握する。そんな未来が現実になるかもしれません。