画像
Credit: en.wikipedia
history archeology

天才チューリングの論文を処分寸前で発見、約9700万円で落札

2025.06.20 07:00:18 Friday

20世紀最大の天才の一人、アラン・チューリング(1912〜1954)

現代のコンピューターや人工知能の土台を築いたこの人物が、かつて書き残した貴重な文書群が、なんとゴミとして処分される寸前に発見されました。

ロンドンのとある家に保管されていた謎の紙袋。

なんとその中にあったのは、チューリングの1936年の代表論文「計算可能数について」や、博士論文の自筆コピーなど、情報科学の歴史にとって重要な一次資料でした。

それらは6月17日に英国で開催されたオークションにて、最終的に62万7000ドル(約9700万円)で落札され、世界的な注目を集めています。

Saved from the shredder, Alan Turing’s papers sell for $627,000 https://www.popsci.com/science/alan-turing-papers-auction/

アラン・チューリングとは何者だったのか?

アラン・チューリングは、イギリス出身の数学者であり、理論計算機科学の天才です。

彼はナチス・ドイツが使っていた暗号機「エニグマ」の解読に成功し、連合国にとって戦局を左右する大きな転機をもたらしました。

また、アルゴリズムの概念を理論的に体系化した功績は、今日のデジタル世界の礎となっています。

さらに、機械が知性を持つかどうかを判定するモデル――のちに「チューリング・テスト」として知られるようになる手法――を提唱し、人工知能の開発における重要な指標を打ち立てました。

しか、彼の偉業や卓越した頭脳にもかかわらず、チューリングは当時の社会の偏見から逃れることができませんでした。

1952年、イギリスの裁判所は当時違法とされていた「同性愛」の罪で彼を有罪とし、チューリングは化学的去勢(ホルモン療法で性浴を減退させる処置)という刑罰を受け入れました。

そしてその2年後、彼は自ら命を絶っています。

画像
生前のチューリング/ Credit: ja.wikipedia

また一方で、チューリングの遺した業績の数々は長らく秘密とされ、公的な賞賛を受けることはありませんでした。

そんな彼の業績と遺産を救ったのが、親友であり同じく数学者であったノーマン・ラトリッジです。

ラトリッジは「陽気な蝶ネクタイの天才」として知られ、生前のチューリングと深い友情を築いていました。

2人は手紙や学術草稿を頻繁にやりとりし、互いのアイデアを高め合っていたとされます。

そしてチューリングの死後、彼の母サラ・チューリングは、息子の資料を「大切な記録になるかもしれない」として、ラトリッジに託しました。

それは未来への、ささやかで確かなバトンだったのです。

次ページ「まさか、こんな発見になるとは」

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

歴史・考古学のニュースhistory archeology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!