未知の深海に広がるクサウオの世界

クサウオは世界中の海に分布し、浅い潮だまりから水深8000メートルを超える海溝まで、多様な環境に適応している魚です。
体はゼリー状でうろこを持たず、腹部には吸盤を持つ種類も多く知られています。
岩に張り付き、あるいは深海のカニや大型動物に“便乗”して移動することもあります。
そのユニークな特徴から、英語では「snailfish(カタツムリのような魚、クサウオ)」と呼ばれています。
これまでに400種以上が記載されてきましたが、水深3000〜5000メートルに広がる深海域では、クサウオの記録は驚くほど少なく、大きな“空白地帯”になっていました。
研究者の間では「本当にクサウオがいないのか、それとも単に採集が難しいだけなのか」という議論が続いていました。
この疑問に挑んだのが、今回の国際研究チームです。
彼らはカリフォルニア沖で有人潜水艇「アルビン」や遠隔操作探査機「ドック・リケッツ」を用いた調査を行い、深海底のサンプルを採集。
こうして3匹のクサウオが研究室へと持ち帰られ、その詳細な形態とDNA解析が進められました。
その結果、3匹すべてがこれまで科学に知られていなかった新種であることが確認されたのです。