3種の新顔「デコボコ」「クロ」「ホソ」のクサウオたち
今回記載された新種は、いずれも1匹ずつしか採集されていません。
しかし、その姿や遺伝子の情報から、どれも既知の種とは異なる特徴を持つことが明らかになりました。
1つ目は「カレプロクトゥス・コリクリ(Careproctus colliculi)」という新種です。
生きているときは鮮やかなピンク色をしており、丸い頭と大きな目を持ちます。
胸びれの上部が特に長く伸び、さらに皮膚の表面に小さな突起が散らばっており、独特の“デコボコした質感”をしています。
腹部の吸盤もよく発達しており、海底にしっかりと張り付くことができたと考えられます。
※ 音量に注意してご視聴ください。
2つ目は「カレプロクトゥス・ヤンセイ(Careproctus yanceyi)」です。
名前の通り全身が漆黒に染まった姿をしており、丸い頭と水平な口を備えています。
吸盤は小型ですが確かに存在しており、体長は15センチを超える比較的大きな個体でした。
遺伝子解析の結果、この種は既知のクサウオとは大きく異なる系統に属する可能性が高く、これまで見落とされていた新しい“深海系統”を示す重要な存在と考えられます。
新種の画像はこちら。
3つ目は「パラリパリス・エム(Paraliparis em)」です。
細長く扁平な黒い体を持ち、他の2種とは異なり吸盤を完全に欠いています。
下あごは鋭く角度をつけて突き出しており、74もの椎骨を持つ点が特徴的です。
遺伝的にはインド洋で知られる別種のクサウオに近いことが示されましたが、遠く離れた太平洋で発見されたことから、海洋に広がるクサウオ類の進化的な広がりを示す貴重な手がかりとなっています。
これら3種はいずれも2019年に採集されたたった1個体から記載されたものです。
研究者たちはCTスキャンを用いて骨格や歯の構造を詳細に解析し、さらにDNAの塩基配列を比較することで、新種としての独立性を慎重に判断しました。
こうした総合的な手法によって、外見が似通いやすい深海魚でも正確に分類できるようになってきています。