「密猟」で激減したジャワサイ
かつてアジアの広い範囲に生息していたジャワサイは、今ではインドネシアのウジュン・クロン国立公園にしか残っていません。
しかも2021年時点で76頭いたジャワサイは、わずか数年で密猟によって50頭まで激減しました。
これは、近年少しずつ増えてきた個体数が一気に逆戻りする非常事態です。
この減少の最大の原因は「密猟」です。
現地の調査によれば、地元住民を含む密猟グループが角を狙い、特にオス(角が大きい)を中心に約26頭を殺害したとされています。
サイの角は東南アジアや中国の一部で伝統医療や富の象徴とされ、高値で取引されています。
そのため、密猟者たちはリスクを承知で武装して公園内に侵入。
カメラトラップが次々と行方不明になり、残ったカメラには武装した人物が映るなどの事件が続きました。
その後の警察の捜査により、密漁に関与した13人が逮捕されることになりました。
それでも、この密猟は「殺された個体数」以上の影響を及ぼしました。
主にオス個体が狙われたことにより、性比の偏りや、繁殖力そのものの低下、遺伝的多様性の喪失といった深刻な問題が同時に進行しているのです。
ジャワサイは妊娠期間が約16か月と非常に長く、もともと個体数の回復が遅い動物です。
こうした構造的な課題が今後の保護をさらに難しくしています。
密猟が発覚して以降、公園ではパトロールの強化や監視体制の見直しが進められ、以前より警備体制も大きく強化されました。
ただし、角は依然として高値で取引されており、密猟をゼロにする完全な方法はまだ確立されていません。
一方で、ここ2年で6頭のジャワサイの赤ちゃんが誕生するなど、絶望的な状況の中にも小さな希望が見えています。
インドネシア政府は、ジャワサイでもスマトラサイと同様に「飼育下繁殖プログラム」の開始を検討しており、新たな保全策の準備も進められています。