投票に行かない人は早く死亡する傾向にあると判明
投票に行かない人は早く死亡する傾向にあると判明 / Credit:Canva
society

投票に行かない人は早く死亡する傾向にあると判明 (2/3)

2025.11.07 19:00:17 Friday

前ページ投票行動が「寿命」に影響するの本当か?

<

1

2

3

>

318万人の21年間に渡る調査が明かした「投票と寿命」

318万人の21年間に渡る調査が明かした「投票と寿命」
318万人の21年間に渡る調査が明かした「投票と寿命」 / Credit:Canva

投票に行かないと死亡の危険度は本当に高くなるのか?

この疑問を確かめるために、研究チームはまず1999年にフィンランドで行われた国会議員選挙の公式投票記録を分析しました。

対象は30歳以上の全有権者で、実際に投票したかどうかの情報を統計局の人口・死亡データと照合しています。統計局のデータには年齢や教育水準、死亡の有無や原因などが含まれており、選挙日から2020年末までの約21年間にわたって一人ひとりの生存状況が追跡されました。

最終的なサンプルは約318万人(男性は約151万人、女性は約168万人)にのぼり、追跡期間中に延べ105万人以上が亡くなりました。

これほど大規模で長期間にわたる追跡により、研究チームは投票の有無と死亡率との関係を統計的に詳しく分析しました。

その結果、投票に行かなかった人ほど死亡の割合が高いことが明確に示されました。

特に際立っていたのは、男女ともに共通してこの傾向が見られた点です。

具体的には、投票しなかった男性は投票した男性より亡くなるペースが1.73倍、女性では1.63倍という大きな差でした。

これは「投票しないこと」と「早く亡くなること」に強い関連があることを示しています。

さらに、この「投票の有無による死亡の差」は、教育水準による死亡差よりも大きいことがわかりました。

(※日本の2010–2015年の30–79歳の全国データでは、大卒・大学院(高学歴)層と比べて中卒層の死亡率は、男性で1.36倍、女性で1.46倍であり、高卒の死亡率は男性で1.16倍、女性で1.24倍でした。米国でも教育差が平均余命に大きく表れます。米国では大学院修士以上の人は、高卒未満より14.7年、高卒より8.3年長いと報告されています。)

社会経済的地位を示す学歴差よりも、投票行動の違いのほうが寿命に大きく影響していたというのは、研究者たち自身も驚く結果でした。

では、どんな死因でこの差が大きくなるのでしょうか。

分析によれば、投票に行く人と行かない人の死亡の差が最も大きく現れたのは、外因死と呼ばれる病気以外の原因でした。

外因死とは、交通事故、暴力事件、アルコールが関係する事故などの死亡を指します。

統計では、投票しなかった人は投票した人に比べ、こうした病気以外(外因)による死亡の危険度が男女とも約2倍に達していました。

また、若い世代ほど投票の有無による死亡の差が大きいこともわかりました。

特に50歳未満の比較的若い成人では、投票しなかった人の死亡率が投票した人より顕著に高かったのです。

一方で、75歳以上の高齢層では、投票した男性の死亡率が投票しなかった女性より低いという、通常の男女差を逆転させる現象も確認されました。

一般的に女性は男性より長生きしやすいですが、「投票しない」という要因はその生物学的利点をも打ち消してしまうほど強い関連を示しました。

さらに、こうした差は所得によってもわずかに異なり、低所得の男性では不投票による死亡の上昇幅が他の層よりも9〜12%ほど大きい傾向がみられました。

全体として、この研究は性別や年齢を問わず「投票しないこと」と「早世(若くして亡くなること)」との間に強い関連があることを明らかにしました。

過去の研究では、高学歴の人ほど投票率が高く、また健康で長生きしやすい傾向が示されていました。

しかし今回の分析では、教育(学歴)の影響を取り除いても、死亡の差の大部分は残りました。

たとえば、年齢と学歴を同時に考慮しても、非投票者の亡くなるペースは男性で1.64倍、女性で1.59倍と依然として高く、学歴だけでは説明できませんでした。

ではなぜ、投票に行かない人の方が危険な亡くなり方をするのでしょうか。

明確な因果関係はわかっていませんが、一つの可能性は社会とのつながりや生活習慣の違いにあります。

投票に行かない人は、地域や人との関わりが薄かったり、生活に困難を抱えていたりする傾向があるのかもしれません。

その結果、健康管理が難しくなり、過度な飲酒や安全対策を怠るなど、リスクの高い行動につながることがあります。

今回の結果は、「投票に行かない」という行動が、社会的な孤立や生活上の困難と結びついている可能性を示しています。

言い換えれば、社会に関心を持ち、参加する人ほど心身の健康度が高いとも考えられるでしょう。

投票という一見地味な行動が、私たちの人生の長さにまでつながっているということです。

次ページ病院の問診票に「投票に行くか」が加わるかもしれない

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

社会のニュースsociety news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!