なぜ「真っ白な壁」が最高の芸術品にならないのか?

なぜ私たちは白い壁を最高の芸術品と思わないのか?
今回の論文は、この矛盾を正面から扱っています。
著者らはこの点について、美を感じるには最低限の覚醒、つまり頭が目覚めている度合いや、興味が必要だと述べています。
つまり、美は「節電のご褒美」だけではなく、「そもそも見る価値がある」という点火装置が必要なのです。
この構図を、心理学の古いけれど強い言葉に翻訳すると、「逆U字」の話になります。
刺激が単純すぎると退屈で快が上がらず、複雑すぎると負担が重くなって快が下がります。
その中間に「いちばん気持ちいい帯域」がある、という考え方です。
では、その逆U字を「節電」の言葉で言い直すと、何が見えてくるのでしょうか。
論文が提示する答えは、かなり生々しい「損得勘定」です。
利益とは、見て分かることが増えることや、快の回路が動いて気分が上がることです。
白い壁はコストが安い代わりに、利益は小さくなりやすいです。
だから「お得感」が立ち上がりにくいのです。
逆に、ほどほどに情報があり、しかも脳がうまくまとめて処理できる刺激は、支払いが小さいのに得るものが大きくなります。
これが「適度な刺激が最も心地よく、美に至る」一つの筋道になります。
もう少しだけ、脳の側から言い換えるとこうなります。
白い壁は、視覚系にとって「処理が楽」というより、「処理が起きない」に近い刺激です。
脳の会計係はたしかに請求書を減らせますが、同時に、脳の中の「学び担当」に渡す仕事もありません。
何も起きない時間は、休息には向いても、快の点数にはつながりにくいのです。
逆に、自然画像のように要素がある程度まとまり、「意味のある全体」としてまとまって見える刺激は、脳の中で統合、つまりバラバラの情報を一つにまとめる処理が起きやすく、結果として効率の良い表現になりやすいと論文は述べます。
節電の快が鳴るのは、「何かを掴めたのに、コストが安かった」という出来事があるときなのです。
つまり「白い壁が勝てない」は、節電美学への反論ではなく、節電美学を裏から証明していることになるでしょう。
美は脳の処理が安いから起きるのではなく、得をするから起きるとも言い換えられるです。
もっとも、全ての美がこの「お得感」で成立するとまでは言い切れません。
美的感覚は個人差や文化差も大きく、本研究が扱ったのは主にカナダ・米国のオンライン参加者と日常的な写真画像です。
この範囲外(現代アートなど)でも同じ法則が成り立つのかは慎重な検証が必要でしょう。
それでも本研究は、美の感じ方に脳が画像を処理するときのエネルギー消費の少なさという生物学的な要素が関わりうることを「初の直接的証拠」示したものです。
これは「美とは脳にとって心地よい状態」という考えを支持する重要な手がかりであり、学術的にも価値の高い成果です。
もしかすると未来の世界では、芸術家やデザイナーが「美の感性」だけでなく、「脳の電気代」という見えない請求書も意識しながら作品を作る時代が来るのかもしれません。
美は空から降ってくる神秘ではなく、脳が必死に節約しながら世界を理解しようとする、その努力の副産物として立ち上がる……そう考えると、少しだけ景色の見え方が変わるかもしれません。



























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