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精子の品質検査を乗っ取り「ライバル精子だけ不良認定させる」仕組みを解明 (2/2)

2026.01.19 20:00:16 Monday

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精子工場の「検査官」遺伝子が、自己中染色体に乗っ取られていた

精子工場の「検査官」遺伝子が、自己中染色体に乗っ取られていた
精子工場の「検査官」遺伝子が、自己中染色体に乗っ取られていた / Credit:Canva

精子の検品システムがズルい遺伝子にハッキングされているのか?

謎を解明するため研究者たちはOvd という遺伝子に注目しました。

これまでの研究でOvd は「遺伝子のズル」に必要であると報告されていたものの、実際に何をしているかわかりませんでした。

そこでまず研究者たちはOvdが壊されたときに何が起こるかを調べてみました。

すると、さきほどの「ほとんどメスしか生まれない」偏った現象が停止されることが確認されました。

このオスの体内ではX染色体がライバルであるY染色体を持つ精子が排除してしまうために子供はメスしかうまれませんが、Ovdが壊されると、ちゃんとオスも生まれるようになったのです。

また、利己的な染色体の仕組み(SD)を第2染色体に持つショウジョウバエでは、Ovdを欠いたオスは子孫の数自体も増加し、無傷のOvdを持つオスに比べて多くの子どもを残せるようになりました。

さらに顕微鏡で精子の発達過程を詳しく調べると、その違いは一目瞭然でした。

Ovd遺伝子があるSDシステムを持つオス(利己的遺伝子を持つ)の場合、発達中の精子のうち半数ほどの核が細長く凝縮できずに崩れてしまいます。

いわば途中で「不合格」とされ処分される精子が大量に出るのです。

一方、Ovdを欠損させたオスではほとんどの精子の核が細長く伸びて成熟していました。

本来なら不良品として破棄されていた精子が、Ovdを取り除くことで見事に救われ子孫増加につながったわけです。

ただこれらの精子の中にはDNAの詰め込みが不十分な「異常な核」も多く含まれたままでした。

Ovdが削除されたことで、本当に排除しなければならない異常な精子も増えていたわけです。

この結果はOvd遺伝子こそが、精子の品質を見極める検査官を担うとともに、ズルをする遺伝子たちは何らかの方法でOvdを利用し、自分のライバル精子たちをオスの体内にいる段階で排除している可能性を示しています。

この状態を例えるならば、まずオスの体が会社で、様々な種類の製品(精子)が様々な企画部で作られている状況だとします。

しかしズルい企画部(ズルい遺伝子)は検品を行う検査官に賄賂を贈り、他の企画部が作った製品(精子)を全て不良品として破棄させていたわけです。

会社(オス)にとっては、優秀な精子を他の企画部がいくら作っても、検査官が買収されているため、ズルい企画部(ズルい遺伝子)の製品しか出荷(射精)できない状態と言えます。

オスにとってはいい迷惑と言えるでしょう。

論文でも研究者たちは「Ovdを介した生殖系列のチェックポイントは本来、異常な配偶子(精子)を淘汰する機能を果たしているが、それが利己的な染色体によって競合する精子を排除するために利用されている」と述べています。

精子は競争の勝者が受精を勝ち取る仕組みを採用していますが、競争は前向きな進化だけでなくオス自身にとっては不利益にもなるズルすらも生み出していたようです。

もし将来、人間など他の生物種でも似たような品質検査のハッキングが起きているかを調べることができれば、ズルい進化の理解も進むでしょう。

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