増えすぎたコアラを避妊処置で減らせ

増えすぎたコアラをどうすればいいのか?
研究者たちが目をつけたのが「避妊による管理」です。
撃たずに、移送も最小限にして、「これ以上は増えないようにする」方向でバランスをとれないかを、数理モデルで検証しようとしたのです。
研究者たちはまず「今、マウントロフティ山地にコアラがどれくらいいるか」をできるだけ正確に描き出すところから始めました。
市民が投稿したコアラの目撃地点と、雨量・気温・土壌などの環境データを組み合わせて、「この場所は住みやすい/住みにくい」という地図を作り、さらに1キロ四方ごとのコアラ密度を推定したのです。
次に、森がどのくらいのコアラ密度まで耐えられるかという「目標値」が設定されました。
ここでは、過去の検討をもとに「0.7頭/ヘクタール以下」という値が一つの基準として採用されています。
この基準で見ると、現在すでに推定分布の約7割以上の地域が「高すぎる密度」に達しており、今のままではユーカリ林が長く持たないおそれが高いと考えられます。
では、避妊をするとどうなるのでしょうか。
研究者たちは、成長したメス(繁殖に参加できるメス)のうち、毎年何パーセントを避妊すればよいかを、いろいろな値でシミュレーションしました。
避妊の対象を「コアラ密度の高いホットスポット」にしぼり、25年分の個体数の変化と、手術・捕獲・人件費などを含めた費用を同時に計算しました。
その結果、成メスの約22%を、毎年ホットスポットでホルモン剤の皮下インプラントによる避妊処置をしていくシナリオが、個体数を「森が耐えられる範囲」まで下げつつ、費用も約3,400万豪ドル(30~40億円前後)に抑えられる、費用対効果の高い案として浮かび上がりました。
この研究成果により、これまでは「コアラがかわいそうだから撃つな」「森を守るためコアラを減らせ」という感情レベルの議論になりがちだったところに、「このくらいの避妊率なら、何年後にどれだけ数が変わる」「費用はこれくらい」という具体的なメニュー表を差し出されました。
ただ研究者たちは、どの密度をゴールにするか、どのくらいのお金を投じるかは、科学者ではなく社会全体の判断だと強調しています。
もしかしたら未来のオーストラリアでは、「今年のマウントロフティのコアラ避妊率は何パーセントにするか」というニュースが、選挙や予算案と並んで大きな話題になっているかもしれません。


























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