沖縄科学技術大学院大学(OIST)が21世紀の錬金術を進化させた

本当に適度な光で物質の性質を書き換えられるのか?
答えを知るために研究者たちがまず用意したのは、原子一層ぶんの厚さしかない半導体です。
これを低温の真空中に置き、光を浴びせながら、時間とともに変化する電子のエネルギーの模様を直接のぞき込みました。
実験ではまず強い光で材料を叩き、そのほぼ同じタイミングで電子のようすを観測しました。
これは従来どおり、「光そのもの」を周期的な揺さぶりとして使うフロケ工学の条件です。
このとき電子の状態は僅かに変化して見えましたが、その信号はとても弱く、物質の性質が変わったと言える状態にはありませんでした。
そこで研究チームは、光の色を励起子がよく生まれるエネルギーに合わせたうえで、光を当てたあとごく短い時間だけ待ってから測定するようにタイミングをずらしました。
こうすると、強い光の場の影響はほぼなくなり、その代わりに物質の中に残っている励起子の集団が主役になっている時間帯をねらって観測することになります。
すると状況は一変しました。
観測データからは電子の状態が大きく描き替わっている様子がはっきりと現れたのです。
先にも述べたように物性において電子の状態は大きな影響を与えます。
実際、このときのエネルギー差はおよそ0.1エレクトロンボルトと見積もられ、光だけで起こそうとした場合に理論的に予測されるものより100倍も大きくなっていました。
これは光を通じて励起子という「内側のゆらぎ」を活用することで、フロケ効果として現れる状態の変形の大きさが劇的に増強されることを意味します。
「観察するタイミングをズラしただけなのでは?」と思うかもしれません。
しかしここで重要なのは、タイミングを変えることで、私たちが「何を見ているか」が切り替わっている点です。
光の照射直後では、まだ外からの光の揺さぶりが残っており、その影響のため変化はよくわかりません。
しかし0.2ピコ秒後になると光パルスは通り過ぎていますが、その間に作られた励起子の集団が、物質の内側から電子を強く揺さぶり続けています。
このタイミングをねらって観測すると、電子のエネルギー状態変化が大きくなる瞬間が現れたのです。
つまり励起子という内側のリズムが、観測するタイミングに応じてまったく違う顔を見せ、それが結果に影響していたわけです。
またこの変化がどのくらい長く続くのかも調べられました。
解析の結果、物質の性質の状態変化は、1ピコ秒近くまで視認できるレベルで続いていました。
これは同じ装置で観測される光だけを使った場合の持続時間(およそ0.1ピコ秒)と比べて、およそ10倍に相当する長さです。
さらに研究者たちは、光の強さを変えながら性質変化の大きさとの関係を調べました。
その結果、励起子がつくる内側の電場の強さが、そのままフロケ効果の強さのつまみになっていることがわかりました。
励起子が少ないときには、信号はうっすらとしか変わりませんが、励起子が増えるにつれてどんどんはっきりしていきました。
変身の強さと励起子の数が、ほぼきれいな直線関係で結ばれていたのです。
この関係をもとに詳しく計算すると、励起子が増えたり減ったりすることで、電子のエネルギーを決める量(自己エネルギー)が時間とともに一定のリズムで揺さぶられていることが分かります。
言い換えると、励起子の集団そのものが、物質の内部にフロケ工学に必要な「周期的なドライブ(リズム)」を作り出している、という解釈が成り立ちます。

























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