算数が苦手な子供の本質に切り込む

数字の問題でだけ脳や行動の違いがはっきり出るのはなぜか?
理由の一つは、数字という記号を使って考えるときに必要な処理のほうがずっと複雑だからというものになります。
丸の多い少ないは、ぱっと見たときの感覚的な「量のセンス」で判断しやすく、数学が苦手な子でもそこはある程度保たれていることが多いと、いろいろな研究で示されています。
一方で「7」という数字を見るときには、「記号としての7」を見て、その裏にある「7という量」を頭の中で呼び出し、さらに問題の難しさに応じて慎重になるかどうか、前の問題でミスしたなら次はペースを落とすかどうか、といった“作戦の立て直し”まで必要になります。
今回の研究や過去の知見は、まさにこの「数字→量への変換」と「作戦を自分で調整する力」のあたりで、数学が苦手な子に弱さが出やすいことを示唆していると言えます。
脳の働きで見ると、その差がいちばん表に出るのも数字の問題を解いているときです。
数字を使う課題では、注意を配ったり切り替えたりする実行機能を担う中前頭回という領域や、「今のはミスかも」と察知して行動を修正する前部帯状皮質という領域が強く働きます。
今回の研究では、こうした数字の課題中に、数学が得意な子に比べて、苦手な子ではこれらの領域の活動が弱く、そのことが「慎重さ」や「ミス後の立て直し」の弱さと結びついている可能性が示されました。
一方で、丸を比べる課題はより直感的に解けるため、そこまで強く実行機能やエラー検知のネットワークに頼らなくても済み、そのぶん2つのグループの差が表に出にくかったと考えられます。
学校で習う算数・数学の多くは、「丸がいくつあるか」よりも、数字や式といった記号を使って量や関係を扱う練習です。
そのため、長い年月の中で、小さなつまずきや処理の遅れが積もって差が開いていくのも、どうしても数字側になりやすいと言えます。
もし今回の研究成果が教育にも応用できるなら「算数が苦手な子どもたち」に対しては単に一生懸命計算問題を解かせるだけでなく、脳のクセを考慮に入れた教え方が有効になるでしょう。
数に対する慎重さやミスのあとに解き方を立て直す力は、算数ドリルの採点結果を見ているだけでは育ちにくいはずだからです。
もしかしたら未来の教育では一人一人の子供の脳回路のクセに合わせて、より根本的な教育アプローチがされているかもしれません。

























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