ラッパムシの「すみっこぐらし」はどうやっているのか?

目も脳も持たないラッパムシが、どうやって「好きなすみっこ」を見つけているのでしょう?
そこで研究者たちは、この謎を解くために、特別な小さな容器を作ってラッパムシの動きをより詳細に観察しました。
すると最初、ラッパムシは容器の中を自由に泳ぎ回りますが、しばらくすると動き方が変わりました。
それまではくるくる回りながら広く探していたのに、突然、壁に沿ってゆっくりと移動し始めたのです。
このとき、ラッパムシの体はいったん縮んで、左右が対称ではない形になります。
さらによく見ると、口の部分が前後の向きに対して30度ほど斜めに傾いていました。
なぜこんな変化が起こるのか不思議ですが、研究者はそこに秘密があると考えました。
ラッパムシの口のまわりには「繊毛」と呼ばれる細かな毛がたくさん並んでいます。
この毛が動くことで水の流れが生まれ、ラッパムシは前に進むことができます。
実は、この口まわりの毛が作る水の流れは、体の他の部分よりも約100倍も強いのです。
この強い水流が口の傾きによって左右非対称になることで、体が自然と壁に沿って進む動きへと切り替わるのです。
このことを確かめるため、研究者たちはコンピューターの中に仮想のラッパムシを作り、その動きをシミュレーションしました。
すると、左右対称の体をしたラッパムシは壁にぶつかってはね返されてしまいましたが、体が少し傾いて非対称になっている場合は、壁に沿って滑らかに動き続けました。
つまりラッパムシは目がなくても、体のちょっとした形の変化だけで壁に沿って移動し、自分に合うすみっこへ自然と導かれていたのです。
研究チームの越後谷さんは、このラッパムシの行動について「構造物の表面に沿って移動しており、探索モードを切り替えている」と説明しています。
そしてラッパムシが鋭い角や細くて深い溝のような場所に近づくと、壁との接触や水の流れとの相互作用が強くなり、移動のスピードが落ちやすくなります。
研究では、この「移動が遅くなる現象」が、ラッパムシが特定のすみっこに固着しやすくなるきっかけになっていると考えています。
つまり、ラッパムシは目や脳で「ここがいい!」と判断しているのではなく、壁との接触や水の流れとの物理的な相互作用によって、すみっこにたどりついていた――という研究チームの考えです。
ではなぜラッパムシはわざわざ狭いすみっこを選ぶのでしょう?
研究者たちによると、狭くて深い場所にはいくつかのメリットがあるそうです。
まず、狭い場所なら大きな敵が入り込みにくいので、安全に暮らせるます。
また、狭い溝の底には水が残りやすく、乾燥から身を守ることもできると考えられます。
さらに、溝や角のような場所にはラッパムシが食べる藻などの餌も集まりやすくなっている可能性もあります。
つまり、ラッパムシは自らが生きるために最適な場所を探していただけでなく、そこに餌も集まるという二重の利点を手に入れていた可能性があります。
























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