脊椎動物の祖先は「単眼サイクロプス」——私たちの目にもその痕跡が残っている
脊椎動物の祖先は「単眼サイクロプス」——私たちの目にもその痕跡が残っている / このイグアナは頭の後ろ側に第三の目を持っています/Credit: Bruno Frías Morales/iNaturalist/Creative Commons
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脊椎動物の祖先は「単眼サイクロプス」——私たちの目にもその痕跡が残っている (2/3)

2026.04.24 19:00:56 Friday

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単眼が分裂して「両眼」になった──脊椎動物の目が特殊な理由

エディアカラ紀末期からカンブリア紀に起きた生物の多様化により、食う食われるの関係が始まり、私たちの先祖は単眼から再び2つの目を作り直した
エディアカラ紀末期からカンブリア紀に起きた生物の多様化により、食う食われるの関係が始まり、私たちの先祖は単眼から再び2つの目を作り直した / つまり時系列を整理するとこうなります。 〜5.75億年前(エディアカラ中期):私たちの祖先は普通の小動物で、一対の眼を持っていた。 〜5.60億年前(エディアカラ後期):定住・濾過食に移行、一対の眼を失い「サイクロプス」化。 〜5.54〜5.39億年前(エディアカラ最末期):中国雲南省の江川生物群がこの時代に当たり、複雑な動物がすでに共存していたことが判明。 〜5.38億年前:エディアカラ紀とカンブリア紀の境界。捕食圧の急激な上昇。 〜5.38〜5.20億年前(カンブリア爆発):ほぼすべての動物の「門」レベルの体制が出現。この時期に、私たちの祖先は再び泳ぎ始め、頭頂の単眼が側方化して両眼を「作り直した」。 〜5.18億年前:「4つ目の魚」化石がこの頃。単眼から眼杯が複製された移行途中の姿。/Credit:Kafetzis et al. (2026) Current Biology; Carlisle et al. (2024) Science Advances; Lei et al. (2026) Nature

約5億5000万年前、私たちの祖先はふたたび変化を迎えます。

いったいなぜ、あれほど合理的だった「定住生活」を捨て、私たちの祖先はふたたび泳ぎ始めたのでしょうか。

これまでの古生物学研究を重ねてみると、その理由も見えてきます。

エディアカラ紀の末期からカンブリア紀の初期にかけて、海洋の酸素環境が大きく変化し、動物の活発な生活や生態系の複雑化を後押ししたと考えられています。

酸素が増えると、エネルギー消費の大きい「肉食」という生き方が広がりやすくなります。獲物を追いかけ、捕まえ、消化するには、濾過食とは比較にならないほどのエネルギーが必要だからです。

捕食者が増えるにつれて、世界は一変します。食べられる側は、殻を作って身を守るか、素早く逃げるか、あるいは敵を見つけて回避するかしなければなりません。

こうして「捕食者 vs 被食者」の進化的軍拡競争が勃発し、硬い殻、素早い泳ぎ、そして画像形成眼が爆発的に進化したのです。

プランクトンを濾しながらじっとしている定住生活では、狩られやすい立場だったでしょう。

私たちの祖先も海底から離れ、もう一度活発に泳ぎ始めました。

泳ぐなら、周囲を見渡す視覚がほしい。ところが困ったことに、一度失われた2つの目はもう戻ってきません。進化は基本的に「巻き戻し」がきかないからです。

そこで起きたのが、唯一残っていた頭頂の単眼の中から、左右1対の眼杯(がんぱい)が生まれて、それぞれが頭の側面へと移動するという出来事でした。

これにより、私たちの祖先は再び2つの目で世界を見ることができるようになりました。

この仮説を裏づけるかもしれない化石も見つかっています。

2026年に『Nature』誌で報告された約5億1800万年前の最初期脊椎動物の化石は、なんと眼を4つ備えていました。

論文の著者たちは、この化石を踏まえ、頭頂の単眼がまずコピーされて2セットに増え、1セットが側面へ移動して左右の眼の原型に、もう1セットが頭頂にとどまって松果体(光に応じて睡眠を調節する脳内の小さな器官)になったと考えました。

「4つ目の魚」は、どちらもまだ眼として機能していた移行途中の姿を化石に焼きつけたものかもしれないのです。

こうして全体を見渡すと、脊椎動物の目にまつわるいくつもの謎が、ひとつながりの物語として説明できるようになります。

「なぜ私たちの網膜は『脳』から発生するのか」

昆虫やタコの目は頭の側面の皮膚が凹んで作られますが、私たち脊椎動物の網膜は脳の一部が外にせり出す形で形成されます。

元が脳内の単眼だったと考えれば、これは自然に説明がつきます。

実際、ヒトの脳オルガノイド(培養ミニ脳)は、特定の培養条件下で、光に反応する眼胞(がんぽう)様の構造を作ることが報告されており、比喩的に言えば「目は脳の一部」であることを象徴的に示しています。

「なぜ網膜は100種類以上もの神経細胞を抱え、大脳皮質に匹敵するほど複雑なのか」

その理由は、単眼の内部に2系統の光センサーが同居していたことにあります。

1つは体内時計のために使われていた「時計用」のゆっくりしたセンサー。もう1つは、かつて失われた2つの目で動きや方向を素早く捉えていた「視覚用」の速いセンサーです。

2つの目が消えても、視覚用センサーの一部は単眼の中に生き残っていました。

本来は別々の仕事をしていたこの2系統を、1つの器官の中でつないだのが、「双極細胞」と呼ばれる橋渡し役の神経細胞です。

注目すべきは、この双極細胞自体も、網膜のために新しく作られたわけではなかったという点です。

最新の遺伝子解析によると、双極細胞には2種類の起源があると考えられており、どちらも単眼の時代から脳の中に存在していた古い細胞が、網膜の中で新たな役目を与えられて再利用されたものとみられています。

いわば脊椎動物の網膜は、ゼロから設計し直された新品ではなく、古い部品を巧みに配線し直して組み上げた、再利用品の集合体だったのです。

昆虫やタコ・イカは、この正中眼ルートとは別の道筋で、それぞれ独自に側方の目を発達させました。

一方、私たちの祖先は一度その目を捨て、単眼からまったく別のルートで目を作り直した。

サイクロプスの定住生活という進化の「迂回路」を通ったからこそ、目の構造そのものが他のどの動物とも異なるものになったのです。

ルンド大学のダン=E・ニルソン名誉教授はこう語っています。

「脊椎動物の目が、昆虫やイカの目とこれほど根本的に異なる理由が、ようやく解明されました。私たちの網膜は脳から発達するのに対し、昆虫やイカの目は頭部側面の皮膚から発生するのです」

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