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geoscience

月2cmのペースで「メキシコシティが地盤沈下」していると判明 (2/2)

2026.05.08 12:00:45 Friday

前ページ歴史的建物が傾く街、メキシコシティ

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原因は地下水の汲み上げ過ぎ

メキシコシティの地盤沈下を理解するには、この街がどこに造られたのかを知る必要があります。

現在のメキシコシティとその周辺は、かつて古代の湖が広がっていた場所に築かれています。

そのため、都市の下には水分を多く含んだ、柔らかい粘土質の地盤があります。

これは、硬い岩盤の上に都市が乗っている状態とは大きく異なります。

スポンジに水をたっぷり含ませると、ふくらんだ状態を保てます。

しかし、その水を抜いて上から重いものを乗せれば、スポンジは押しつぶされて薄くなります。

メキシコシティの地下でも、それに近いことが起きています。

都市の下にある帯水層から地下水を大量に汲み上げると、水を含んで支えられていた粘土質の地盤が圧縮されます。

その上には巨大な都市の重みが乗っています。

水が抜けた地盤は少しずつ締め固まり、結果として地表が沈んでいくのです。

しかも、この変化は簡単には元に戻りません。

一度圧縮された粘土質の地盤は、再び水を入れたからといって、元の厚みまでふくらむわけではありません。

そのため、地盤沈下は長期的かつ蓄積的な問題になります。

厄介なのは、メキシコシティが今も地下水に大きく依存していることです。

地下の帯水層は、首都の水供給のおよそ半分を担っているとされます。

つまり、地下水の汲み上げを減らさなければ沈下は止まりにくい一方で、急に汲み上げを止めれば、多くの住民の生活用水が足りなくなる可能性があります。

さらに近年は、気候変動の影響により降雨量の少ない年が続き、水不足への不安も高まっています。

地下水を汲み上げるほど地盤は沈み、地盤が沈むほど水道管が壊れ、壊れた水道管から水が失われます。

そして水が足りなくなるほど、また地下水に頼らざるを得なくなります。

今回のNISARによる観測は、この悪循環をより詳しく可視化するものです。

沈下がどの地域で速く進んでいるのか、土地の種類によってどのように違うのか、これまで調べにくかった都市周辺部では何が起きているのかを知ることは、対策を考えるうえで重要です。

ただし、観測できることと、問題を止められることは別です。

建物の基礎を補強するような局所的な対策はありますが、都市全体の沈下を止めるには、地下水への依存を減らす必要があります。

しかし、それは水道インフラ、漏水対策、雨水利用、別の水源の確保などを含む、非常に大きな課題です。

メキシコシティの地盤沈下は、単に「地面が沈んでいる」という話ではありません。

それは、都市の成り立ち、水の使い方、インフラの老朽化、気候変動が絡み合った、現代都市の脆さを映し出す現象なのです。

地面は一気に崩れ落ちるわけではありません。

しかし、月に数センチという静かな沈下は、積み重なれば道路を歪め、建物を傾け、水道管を壊し、やがて都市の暮らしそのものを揺るがします。

宇宙から見えるメキシコシティの沈下は、足元の地面が決して「当たり前に安定したもの」ではないことを教えているのです。

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