第二の誘導で「骨・関節・腱・靭帯」が再生された
そこでチームは、FGF2を与えた数日後に、もう1つの成長因子である骨形成タンパク質2(BMP2)を投与しました。
BMP2は名前の通り、骨の形成に関わるシグナルとして知られています。
今回の処理は、FGF2とBMP2を同時に与えたものではありません。
まずFGF2で傷口の細胞を芽体に似た状態へ向かわせ、その後にBMP2で新たな構造を作るよう促す、2段階の治療法でした。
チームはこの仕組みを、「まず細胞を瘢痕形成から遠ざけ、その後に何を作るべきかを伝える」と表現しています。
この2段階処理によって、結果は大きく変わりました。
FGF2のあとにBMP2を与えたマウスの足指では、切断された部分に新しい骨格要素が形成されたのです。
組織を詳しく調べると、骨だけでなく、関節軟骨、腱、靭帯、滑膜関節に似た構造まで確認されました。
つまり、単に硬い骨の塊ができたのではなく、指を構成する複数の部品が、ある程度まとまった形で現れていたのです。
チームはこれを、構成要素としては揃っているが完全ではない指の再生と位置づけています。

もちろん、ここで注意が必要です。
今回のマウスで、切断された足指が新品のように完璧に戻ったわけではありません。
再生した構造は形がいびつだったり、小さかったりし、元の指の正確な複製とは言えませんでした。
それでも、失われた部位に本来期待される骨、腱、靭帯、関節のような構造が確認されたことは大きな意味を持ちます。
これまで哺乳類の再生医療では、外から幹細胞を入れて組織を作らせるという考え方がよく注目されてきました。
しかし今回の研究では、外部から幹細胞を移植したわけではありません。
傷口にすでに存在していた細胞のふるまいを、成長因子によって変えたのです。
チームは「幹細胞を取り出して戻す必要はありません。それらはすでにそこにあります。必要なのは、それらを望むようにふるまわせる方法を学ぶことです」と説明しています。
この点は、哺乳類の再生能力に対する見方を変えるものです。
もし体内の細胞が、普段は瘢痕を作る方向に進んでいるだけで、本当は再生へ向かう潜在能力を持っているのだとすれば、再生できない理由は「能力が完全に失われたから」ではなく、「再生の適切な指示が出ていないから」なのかもしれません。
ただし、この成果をそのまま人間の手足再生に結びつけるのは早計です。
今回の実験は、生後間もないマウスの足指を対象にしたもの。
人間の成人の腕や脚で同じ反応が起こるかは、まったく別の問題です。
それでも、今回の研究には比較的近い将来に応用できる可能性もあります。
BMP2はすでに一部の再建手術などで使われており、FGF2も複数の臨床試験で検討されています。
そのため、完全な手足の再生ではなくても、瘢痕を減らす、切断後の組織修復を改善する、といった方向では、応用の道が開かれるかもしれません。
「哺乳類は再生できない」という長年の常識は、少しずつ揺らぎ始めています。
今回の研究が示したのは、人間の手足がすぐに再生できるようになるという未来ではありません。
むしろ重要なのは、哺乳類の体にも、失われた組織を作り直すための細胞状態が、完全には消えずに残っているかもしれないという点です。
サンショウウオのような能力は、私たちから完全に遠いものではなく、体の傷をふさぐ仕組みの奥に眠っている可能性があります。




























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