コーヒーの味は「舌」だけで決まらない
私たちは普段、飲み物の味を「舌で感じている」と考えています。
しかし実際の飲食体験は、味覚だけでなく、香り、温度、見た目、容器の重さ、手触りなど、さまざまな感覚が組み合わさって生まれています。
たとえば、同じ飲み物でも、薄い紙コップで飲むのと、重みのある陶器のカップで飲むのでは、少し印象が変わることがあります。
これまでにも、カップの色や形、材質が飲み物の味の評価に影響することは報告されてきました。
ただし、従来の研究には課題もありました。
カップの材質が違うと、手で触れる感覚だけでなく、見た目や、唇に当たる感覚も変わってしまいます。
そのため、味の変化が「手触り」だけによるものなのか、それとも視覚や口元の触覚の影響なのかを切り分けることが難しかったのです。
そこで今回の研究では、手で感じる触覚そのものに注目しました。
実験では、紙やすりで作ったざらざらしたスリーブと、クラフト紙で作ったさらさらしたスリーブを用意しました。

カップ自体は同じものを使い、参加者には目隠しをしてもらいました。
これにより、見た目の違いやカップそのものの材質の違いをできるだけ排除し、「手で感じるスリーブの質感」がコーヒーの味にどう影響するかを調べたのです。
参加者92名は、約68℃のブラックコーヒーを約115mlずつ、ざらざらしたスリーブのカップと、さらさらしたスリーブのカップから順に飲みました。
その結果、ざらざらしたカップの後にさらさらしたカップで飲んだ場合、コーヒーの酸味が弱く感じられることがわかりました。
一方で、逆の順番では同じ効果は確認されませんでした。
また、甘味や後味については、手触りによる明確な影響は見られませんでした。
つまり、この研究で示されたのは、「カップの手触りでコーヒーの味すべてが変わる」という単純な話ではありません。
より正確には、さらさらした手触りが、特にコーヒーの酸味の感じ方を弱める可能性がある、という結果です。





























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