東京・石神井池「かいぼり」で出会えた在来種と外来種
取材当日、カップルや野球少年で賑わう石神井公園を歩いていると、熱心に池をのぞく人たちに遭遇しました。事前に池から水が抜けていたのです。
池の底は粘度の高い泥が溜まっているような状態で、名物のスワンボートも座礁していました。
池で作業をしていた調査員さんのヒザ下まで水位が下がっているのが分かります。水位が下がって寂しいような気もしますが、平常時の石神井池は下の写真みたいなステキな公園です。
近隣住民の憩いの場やデートスポットとして大事にされてきた公園なんですね。
それではかいぼりの様子を見に行きましょう。
池では網で直接生き物を捕獲している調査員さんの様子を間近で見られました。
捕獲された生き物は石神井公園内にて、種類ごとに分別するそうです。
この日はどの生き物が何匹いるか知ることができなかったので、後日東京都建設局の担当者の方に教えていただきました。
はたしてどんな生き物が発見されたのでしょうか?
石神井池に生息していた外来種
今回のかいぼりの結果、石神井池にいた生き物の70%が外来種であることが判明しました。外来種がこんなに多いなんて…。
上の円グラフは今回のかいぼりで得られた在来種の合計(2280匹)と外来種の合計(5403匹)を比べたものですが、ここから日本の池は外来種に侵略されつつあることが分かりますね。
では具体的にどんな種類の外来種、在来種が発見されたのでしょうか?
以下に発見された外来種をまとめました。
ブルーギル(3515 匹)、ゲンゴロウブナ(1,274 匹)、コイ(322 匹)、ヌマチチブ(190 匹)、オオクチバス(72 匹)
アメリカザリガニ(14 匹)、カワリヌマエビ属(11 匹)、ミシシッピアカミミガメ(2 匹)、クサガメ(2 匹)、ハナガメ(1 匹)
外来種の65%を超えているブルーギルの数に驚きますね…。種類も約10種と豊富にいることが分かりました。
下の図は捕獲された外来種の写真を大きさごとに並べた図になります。
コイって外来種なのか…と思った人もいるでしょう。コイは大きく「野鯉」と「真鯉(錦鯉)」に分けられていて、種レベルに相当する遺伝子の違いをもつことが分かっています。
かいぼりで見つかったコイは「真鯉」に分類され、飼育用として海外から持ち込まれていたものなので、外来種という区分になります。
オオクチバスやブルーギルは食用として日本に輸入された生き物です。
特にオオクチバスは釣り魚としても人気種であり、各地で意図的な放流がおこなわれてきた可能性も指摘されています。
また今回捕獲された外来種はすべて駆除されるとのことです。
肉食性の外来種(オオクチバスなど)が在来種を食べてしまうのはもちろんのこと、水草やプランクトンを食べる外来種(コイなど)も間接的に在来種の居場所を奪ってしまうため、駆除が必要なんですね。
でも悪いのは外来種ではなく、放流した人間なのでしょう。
石神井池に生息していた在来種
さらに今回のかいぼりでは、以下の在来種が確認されました。
モツゴ(998 匹)、ギンブナ(927 匹)、テナガエビ(243 匹)、スジエビ(102 匹)、クロダハゼ(7 匹)、ナマズ(2 匹)、ニホンウナギ(1 匹)
石神井池に生息している在来種は、モツゴやギンブナなどのコイ目の魚が80%を超えていました。
次にテナガエビやスジエビが多かったようです。在来種は7種類しか生息せず、外来種より少ないんですね。
サイズ感的にはギンブナが約30cmと大きいようです。ちなみに上の図に載っていない「クロダハゼ」は下の写真のような生き物。
体長は4〜10cmと小さく斑点模様が特徴的です。全国の河川や湖沼に生息しています。
また、今回捕獲された在来種は一時飼養のうえ、石神井池に水を戻す際に放流されるそうです。
そういえば水が抜かれた池ってどうなるんでしょうか?