「もっと働きたい」意欲に隠された裏の事情
では、労働時間を長くしたいと思っていた人は、その後、本当に労働時間を増やしていたのでしょうか。
この点を調べられるのが、同じ人を継続して追跡するパネル調査の強みです。
研究チームは、2024年に「労働時間を長くしたい」と回答した人について、2026年にかけて労働時間がどう変わったのかを分析。
その結果、実際に労働時間が増えた人は、男性で25.8%、女性で63%でした。
月あたりの労働時間で見ると、男性は平均5.1時間、女性は平均19.4時間増加していました。
この結果は、同じ「労働時間を長くしたい」という意向を持っていても、男性と女性では実際の変化の出方が異なることを示しています。
特に女性では、もともとの労働時間が短いケースが多く、増やせる余地が比較的大きかった可能性があります。
さらに重要なのは、女性がどのような経路で労働時間を増やしていたのかという点です。
調査では、2024年に非正規雇用だった女性のうち、労働時間を長くしたい意向を持っていた人では、27.7%が2026年までに正規雇用へ移っていました。
これは、女性全体における非正規雇用から正規雇用への移動率である8.6%よりもかなり高い数値です。
つまり、労働時間を増やしたい女性の一部は、単に今の仕事で勤務時間を増やすのではなく、非正規雇用から正規雇用へ移ることで、実際の労働時間を増やしていたと考えられます。
ここで重要なのは、「労働時間を長くしたい人がいる」という事実だけを切り取らないことです。
その人たちは就業者全体では少数であり、特に非正規雇用や低年収層に偏っていました。
つまり、背景には「もっと働きたい」という前向きな希望だけでなく、「働く時間を増やさなければ十分な収入を得にくい」という事情がある可能性があります。
労働力不足への対応を考えるうえでは、単に労働時間を延ばす方向だけでなく、短い時間でも安定した収入を得られる働き方や、希望する人が正規雇用へ移りやすい環境づくりも重要になります。
今回の調査は、「誰がもっと働きたいのか」を見ることで、日本の働き方の課題を浮かび上がらせたものです。
労働時間を長くしたい人は少数ですが、その声の背後には、収入や雇用形態に関する切実な問題が隠れているのです。





























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