複数のAIを集めたら、集団としてどんな判断をするのか?
アニメ「エヴァンゲリオン」には、3つの異なる思考をするAIが議論して、一つの高度な意思決定を行うMAGIシステムというものが出てきます。
このような、複数のAIに意見を出させて結論を決める仕組みというのは、SF作品でよく描かれることがあります。
こうした仕組みは、かつてはSFの中だけの話でしたが、今やそのようなシステムは実現に近づいています。
ただ現状では、複数のAIエージェントを連携させた場合、どのような協調行動を取るのかという点について、まだ十分に調べられてはいません。
今回の研究チームが着目したのは、AIの集団がどれを選んだとしても全く等価な選択肢のいずれかを選択しなければならないときに、多数派の選択に引っ張られることはあるのか? という問題でした。
この問題をイメージする助けになるのが、社会心理学者ムザファー・シェリフが1935年に行った自動運動効果という錯覚を利用した実験です。
暗い部屋で静止した光点を見つめていると、光はまったく動いていないにも関わらず、その位置が動いているように見えることがあります。この錯覚を自動運動効果と呼びます。
シェリフはこの現象を利用して、参加者に光がどれくらい動いたかを答えさせる実験を行いました。
もちろんこの光の移動は錯覚なので、正解はありません。なのに他者の回答が聞こえる状態で質問を繰り返すと、参加者たちの回答が次第に共通の範囲へ収束していったのです。
シェリフはこの結果について、明確な判定基準が存在しない曖昧な問題であっても、他者の回答が影響することで最終的に秩序(方向性)が生じると述べています。
もちろん人間の場合は、他者と異なる回答をすると不安を感じたり、周りに合わせようとする心理が影響します。
ではAIが、判断基準のまったくない選択肢に対して、「他の人はどちらを選びましたよ」という情報だけ与えたとき、どんな判断をするようになるのでしょうか?
今回の研究ではGPT、Claude、Llama系列のLLMをAIエージェントとして使い、選択肢に正解も優劣もない「k」と「z」のような意味のない文字列を使って、「支持したい意見」を選ばせました。
ただしその選択の際、自分以外の全AIが現在どちらを支持しているかという情報だけ与えています。それ以外は、特に「多数派に従え」「合意しろ」といった指示は与えていません。
それでも、多くの高性能モデルが25対24のような小さな人数差でも、人数の多い側を選びやすい傾向が現れたのです。
さらに30対20、40対10というように集団全体の偏りが大きくなるほど、多数派側を選ぶ確率も高くなりました。
つまり、選択肢そのものに判断材料がなくても、「他のAIの多くがどちらを選んでいるか」がAIの選択に影響したのです。
最初は同数でも、一方がわずかに多くなると、その影響から多数派を次のAIが選びやすくなり、人数差がさらに広がるという現象が確認されたのです。
































