「日本は働いている割に給料が安い」は本当なのか?
では、もう1つよく聞かれる「日本は働く時間の割に所得が低い」という話はどうでしょうか。
OECDの2024年データでは、日本の平均年間賃金は4万9446ドルでした。
OECD平均は6万1147ドル、フランスは6万608ドル、英国は6万3691ドル、ドイツは6万9433ドル、米国は8万2933ドルです。
韓国は5万947ドルで、日本と比較的近い水準でした。
なおここで使われているドルは、単純に為替レートで円をドルへ変換したものではありません。
国によって物価が違うため、同じ100ドルでも買える物やサービスの量は違います。
そこで、「購買力平価(PPP:Purchasing Power Parity)」というもので値を調整しています。購買力平価とは、各国で同じような商品やサービスを買うのに必要な金額を基準に通貨を換算し、物価の差をできるだけ取り除いて比較する方法です。
たとえば「円安だから日本の給料がドル換算で安く見えているだけ」という影響を小さくし、「その給料で国内でどれだけ物やサービスを買えるか」に近づけて比較するわけです。
その購買力平価で調整しても、日本の平均年間賃金はOECD平均より約19%低く、ドイツより約29%、米国より約40%低い水準です。
しかも日本では、2000年の同じ指標が約5万109ドル、2024年が4万9446ドルとなっており、実質的には20年以上ほとんど伸びていません。
一方でOECD平均は同期間に約5万1215ドルから6万1147ドルへ、米国は約6万4928ドルから8万2933ドルへ増えています。

この意味では、「日本では長く働いても所得が増えていない」という感覚にはかなり根拠があります。
日本はフランスやドイツより年間労働時間が長い一方、購買力平価で調整した平均賃金は両国より低くなっています。
また米国より年間労働時間は短いものの、平均賃金にはかなり大きな差があります。
問題は「何時間働くか」だけではなく「1時間でどれだけの価値を生み出せるか」
この違いを考えるうえで重要なのが「労働生産性」です。
労働生産性とは、簡単にいえば、働いた時間からどれだけの経済的価値を生み出したかを示す指標です。
日本生産性本部がOECDのデータをもとに計算したところ、2024年の日本の時間当たり労働生産性は購買力平価換算で60.1ドルでした。
これはOECD加盟38カ国中28位です。
OECD自身も2026年の対日経済審査で、日本の時間当たり労働生産性はOECD平均を下回っていると指摘しています。
さらに日本の時間当たり生産性の年間成長率は、2000~2008年には平均1.2%だったのに対し、2019~2024年には0.3%まで鈍化しました。
労働生産性には、企業がどれだけ設備やITに投資しているか、仕事がどのように分担されているか、産業構造がどうなっているか、企業が商品やサービスにどれだけ高い付加価値をつけられるかなど、多くの要因が影響します。
このことからOECDは、日本の生産性停滞の背景として、労働者1人当たりの設備投資の伸び悩みや、先端デジタル技術の導入の遅れなどを挙げています。
他にも価値を生まない多段階の取引や、中小企業と大企業の生産性格差、公的融資などで低生産性企業が市場に残りやすいこと、低生産性企業から高生産性企業へ人材や資本が移りにくい産業構造などの問題が指摘されています。
日本の問題は、労働時間よりこのような構造上の問題や投資の遅れ、労働力の分配が上手く行っていないところにあるのでしょう。

































