「性転換」という抜け道は閉じていた

一つだけ、研究チームが最初から恐れていたシナリオがありました。
魚の中には、周囲の密度や環境に応じて性別を変える種がいます。
遺伝子の設計図はオスなのに、体はメスとして育ってしまう魚がいるのです。
オスばかりになった川で、遺伝的なオスの一部がメスとして育てば、作戦は根底から崩れます。
そこで研究チームは、10年かけて集めた計4677匹について、遺伝子が示す性別と、卵巣か精巣かを目で確かめて分かった性別が食い違わないかを一匹ずつ照合しました。
結果は食い違いゼロ。
メスが消えていく極限の状況でも、遺伝的にオスの魚がメスになった例は1匹もありませんでした。
ブルックトラウトの性別はsdYという1つの遺伝子で決まっており、この遺伝子が環境の影響をはねつけたのだろうと研究者たちは考えています。
もちろん、この成功は外から魚が入ってこない小さな沢での話です。
大きな川や湖に同じ手が通じるかはまだ分かっておらず、下流からの再侵入という問題も残ります。
論文は超オスを万能薬ではなく、電気ショック漁法や薬剤と組み合わせて使う「道具の一つ」と位置づけています。
それでも、魚を増やすための技術で外来魚から最後のメスを消し去れると、実際の川で証明された意味は小さくありません。
研究者たちは、薬剤の使用が望まれない場所や難しい場所ほど、この方法が力を発揮すると述べています。





























