哺乳類140種の3分の2で、オスは大きく生まれていた

「女の子より男の子のほうがお産が大変」という傾向は人間だけのものなのか?
それとも「出産」を行う哺乳類にそもそもそういう傾向があるのか?
謎を確かめるため、ウィーン大学のニコール・グルンストラ氏とUCLのジョナサン・ウェルズ氏は、哺乳類の繁殖データを集め直しました。
獣医学、畜産、動物園と野生動物の文献から、オスとメスに分けて出生体重が記録されている種を拾い集め続けたのです。
集まったのは140種で、サルの仲間、ネズミの仲間、ウシやシカの仲間、イヌやネコの仲間などで、胎盤を持つ哺乳類を大きく分けたときの19のグループのうち、11グループにまたがっています。
結果、140種のうち93種、全体のおよそ3分の2で、オスのほうが大きく生まれていることがわかりました。
さらに大人になったときの状態と比較すると、大人になったときにオスのほうが大きい種では、78%でオスが大きく生まれていました。
一方で、大人のメスのほうが大きい種では、オスが大きく生まれる割合は38%まで下がります。
大人の体格差は、思春期どころか、生まれる前からもう始まっているということになります。
さらに研究では直感に反する結果も得られました。
ウマのように生まれてすぐ立って歩く子を産む種でも、ネズミのように目も開かない子を産む種でも、同じようにオスのほうが大きく生まれる傾向があったのです。
実際、子宮の中で体格差がつきはじめる時期は、かなり早いことがわかっています。
たとえばブタでは115日の妊娠期間のうち58日目には、すでにオスの胎児のほうが長く重くなっています。
さらにウマでは11か月ほどの妊娠のうち、最初の1か月半で胎児の大きさに差がついていました。
では、その差は本当に難産につながっているのでしょうか?
実は畜産の現場では昔から、ウシ、ヒツジ、ヤギではオスの仔のほうがお産に手を借りることが多い、と知られていました。
また近年では飼育下のアジアゾウやカピバラ、ベルベットモンキーからも、同じ方向の報告があります。
ですが最も興味深いのは、体重だけでは説明がつかない点です。
ウシやヒツジでは、たとえ体重が同じ場合でも、それでもオス胎児のほうが難産になりやすい傾向があったのです。
研究者たちが目を向けているのは、体の大きさ以外の違いです。
たとえば人間の胎児を調べた研究でも、男の子は頭が大きく、そして幅広い一方、太ももの骨の長さは女の子と変わりません。
男女の差は体じゅうに均等に出るのではなく、産道をいちばん通りにくい部分に集まっているのです。
体の形に加えて、生まれてくるときの赤ちゃんのふるまいの違いも関わっているのではないか、と研究者たちはみています。
しかしなぜ哺乳類の多くでは、危険をおかしてまで男の子を大きく生むのでしょうか?

























