空腹は筋トレの回数を減らす

何も食べずに朝いちばんでジムへ行くと、いつもと同じメニューが妙に重く感じられることがあります。
朝食を抜くと筋トレでこなせる回数が落ちるという現象は、これまでの実験でも報告されています。
理由としてまず思い浮かぶのは、燃料切れでしょう。
胃が空なのだから、体を動かすエネルギーも足りないのだろうと考えたくなります。
ところが、それだけでは説明しきれない結果が、2020年の実験で得られました。
今回の研究を率いたナハルディン氏らは、本物とはエネルギー量が大きく異なる「偽の朝食」を用意したのです。とろみも味も舌触りも、炭水化物を多く含む本物の朝食に合わせてありました。
この偽の朝食は、本物の朝食と同じように空腹感を下げ、満腹感を上げました。そして水を飲んだ場合よりも、スクワットの回数を増やしたのです。
このことから回数の違いには、摂取したカロリーだけでなく、「空腹が収まった」という感覚も関わっている可能性が示されました。
2022年には、運動前の空腹感が低いほどスクワットの成績がよいことも報告されました。
では、空腹感はどのように筋トレの回数に関わるのでしょうか。
考える手がかりになるのは、「どこで運動をやめるか」という判断です。
今回の運動は、決められた回数だけこなして終わるのではなく、続けられなくなるまで繰り返す方式です。
「もう上がらない」「もうやめたい」と感じるその限界には、筋肉の状態だけでなく、本人の感覚も関わってくると考えられます。 いわば「続けるか、やめるか」を決める天秤が、頭の中にもあるわけです。
たとえば、お腹が減ったまま会議に出ると、話の中身より昼に何を食べるかが気になってしまうことがあります。
空腹はそれほど強く注意を引く感覚です。
研究チームは、空腹に気を取られることが、運動を続ける妨げにもなりうると考えました。
空腹感が和らげば、先ほどの天秤も「やめる」側へ傾きにくくなるのかもしれません。
食事がトレーニングを助ける理由の一部も、この空腹感の軽減にあるのではないか、というのが研究チームの考えです。
では、空腹感を和らげるために、本当に食べ物を口へ入れることは必須なのでしょうか?
匂いの情報は、食欲や感情に関わる脳の働きと密接に結びついています。
食べ物の匂いは、食欲をかき立てることもあれば、満腹感を呼び起こすこともあると報告されてきました。
そこで今回研究者たちは、チョコレートの匂いを嗅ぐことが限界にどのように影響するかを調べることにしました。





















