■商業用に収穫されるカニが、メタンをエネルギー源としていることが明らかとなった
■メタンは季節的な影響が少なく、数百年は枯渇しないと考えられているため、深海生物にとって重要なエネルギー源である
■世界中にあるメタンの湧出帯が、深海生物を気候変動による食糧難から救う可能性がある
メタンが湧き出す海底にカニが多いことはよく知られています。カニはメタンをエネルギー源にして生きる微生物などを目当てに、そこに集まっていると考えられているのです。
今回の研究では、商業用に収穫されたカニの種が、同じエネルギー源を使用していることが明らかになりました。
Flipping for Food: The Use of a Methane Seep by Tanner Crabs (Chionoecetes tanneri)
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmars.2019.00043/full
メタンは過小評価されていた
この発見により、海底をすみかにしている種にとって、メタンの湧出帯が気候変動に対する重要なリスクヘッジとなっている可能性があることが分かりました。というのも、気候変動のほぼすべてのモデルにおいて、近い将来に海底の食糧が減少することが予想されているのです。
研究をおこなったオレゴン州立大学の海洋生態学者、アンドリュー・サーバー氏は、「メタンは過小評価されていますが、海洋生物にとって非常に重要なエネルギー源なのかもしれません。プランクトンと異なり、メタンは季節による影響をあまり受けませんし、あと数百年は湧出が続くと考えられているのです」と語っています。
カニだけでなく、他の商業用に収穫される魚も、特に深海においてはメタンの湧出帯の近くにいることがよくあります。その中には、日本に輸出される「the longspine thornyhead」と呼ばれるキチジ属の魚も含まれています。