Point
■聖書にも登場するイスラエル人最大の敵、古代ペリシテ人のDNAを調査
■研究の結果、祖先の一部は南ヨーロッパに起源を持つことが判明。従来の説と一致
■最も近いDNAを持っていたのが「クレタ島」に住んでいた人々だが、サンプル数が少なすぎるため、そこが彼らのホームランドと断定することはできない
聖書では、イスラエルから「契約の箱を奪った」ことで知られるペリシテ人。紀元前13世紀頃に地中海に襲来した謎の最強軍団、「海の民」の一分子ともいわれているが、その起源は長い間不明だった。
しかし彼らの遺伝子を調査した結果、この古代民族の祖先の一部はパレスチナから西へと足を伸ばしたヨーロッパに存在していることが明らかに。
ひょっとすると、聖書に登場した2.9メートルの巨人ゴリアテの出自もわかるかもしれない。
研究は「Science Advances」に掲載されている。
Ancient DNA sheds light on the genetic origins of early Iron Age Philistines
https://advances.sciencemag.org/content/5/7/eaax0061
海を渡ったペリシテ人たち
マックス・プランク研究所の研究者らは、ペリシテ人の町として知られていたアシュケロンで発見された10人の化石のDNAを調査した。
アシュケロンは現在のイスラエルに当たる場所に位置する都市だ。
ちなみにイスラエルの一部パレスチナは、ヘブライ語で「ペリシテ人の土地」を意味しているが、現在のパレスチナ人はアラブ民族のため直接関係があるかは明らかでない。
調査の結果、10人のDNAは、紀元前12世紀ごろにヨーロッパからアシュケロンに人々が押し寄せたことを示していた。
そうした個体のDNAが最も大きな類似点を持っていたのが、古代にクレタ島で暮らしていた人々だ。しかし、サンプルの数が少なすぎるため、彼らのホームランドがクレタ島であると特定できたわけではないとのこと。
また、アシュケロンで発見された紀元前10~9世紀の化石のDNAにはヨーロッパからの移民の痕跡はほとんどなかった。これはペリシテ人が現地の人と結婚し、遺伝子が希釈されたことを示している。
聖書内での嫌われぶりを見ると誰もペリシテ人とは結婚したがりそうにないものだが、これに関しては聖書に描かれていない何かがあったのかもしれない。