元素周期表
元素周期表 / Credit:© 2018-2019 International Year of the Periodic Table of Chemical Elements.
chemistry

ひと目で「どの元素が何に使われるのか」分かる…かもしれない化学元素アート!

2019.11.24 Sunday

化学の教科書お馴染みの元素周期律表。これを作り出したのは、元素を原子量の順番に並べると一定の周期に従って似たような性質を示すということに気付いた、ロシアのメンデレーエフです。

この周期的に現れる元素の性質は、後に量子力学によって説明されることになりますが、メンデレーエフはそれよりずっと前の1869年に周期律表を作り、以後その内容は書き加えられることはあっても、書き換えられることはありませんでした。

メンデレーエフは「夢の中で周期律を発見した」と言ったそうですが、夢に見るくらい元素の性質に心を奪われ研究に打ち込んでいたのでしょう。

そんな偉大な発見は、2019年で150周年を迎えました。これを記念して、世界ではあちこちで周期律表にまつわる展示イベントが行われています。

今回紹介するのは、オーストラリアの周期律表イベントで展示される化学アートです。「元素記号は覚えたけどいまいちピンとこない」という人にも役に立つかもしれません。

これはアーティストDamon Kowarsky氏とHyunju Kim氏が共同で制作した作品です。(art.damon

A First-Year Artist Transforms the Periodic Table https://www.bowdoin.edu/news/2019/02/a-first-years-extraordinary-periodic-table.html IYPT2019 https://www.iypt2019.org/

代表的な元素の解説

原子番号2 ヘリウム

Credit:Damon Kowarsky and Hyunju Kim

一般的には風船に使用され、空気より軽くて密度が低い気体がヘリウムです。この特性のために、このヘリウムガスを吸い込んで声帯内に満たすと、通る声(振動)が空気中のときより早く伝わるようになり声が高くなるという、ちょっと変わった効果があります。

化学者にとってのヘリウムは、冷却に有用な材料です。これは液体状態で-269℃まで冷却でき、化学的に安定した希ガスなので、他の元素とまったく化学反応を起こさないためです。

アーティストにとっては、少々難しい元素になります。なぜなら視覚的に表現する今回の企画のスタートとしては、表現する対象を見つけるのが困難な元素だからです。ヘリウム単体で直接成り立つ物質は、太陽の核くらいなので、ここでは核融合の様子とともに、それが描かれています。

原子番号7 窒素

Credit:Damon Kowarsky and Hyunju Kim

窒素は、タンパク質や核酸(DNA)に多く見られる生命にとって重要な元素です。また、地球大気の約78%は窒素で形成されています。この他、肥料としても有用な成分です。

化学的には、大気中の窒素は三重結合という形で分子になっており、2つの原子の結合としては2番目に高い強度を持っています。そのため、分解する際に多量のエネルギーを放出します。これは爆弾に利用されます。

アーティストのデザインでは、生命にとって不可欠な窒素化合物として植物と稲妻が描かれています。なぜ稲妻? と思うかもしれませんが、大気中の窒素を肥料として植物が取り入れる場合、稲妻が重要な役割を果たすからです。

稲妻の放電は、大気中の窒素を窒素酸化物へと変え、それが雨とともに大地に降り注ぐことで植物に栄養を運びます。古来より稲妻の多かった年は豊作になると言われていましたが、それはこうした作用によるものです。

もちろん、日本で雷のことを「稲」の「妻」と書くのも、昔の人達が経験的にこの作用を理解していたためと考えられます。

原子番号20 カルシウム

Credit:Damon Kowarsky and Hyunju Kim

カルシウムは、石灰岩、チョーク、サンゴ、そして骨や歯に多く見られる元素です。

化学的には、塩化カルシウムとなることで水分を除去する乾燥剤として用いられる存在です。雪国では路面の凍結を防止するために撒かれ、自動車の底を錆びだらけにします。

アーティストのデザインは、カルシウムで構成される私達に最も身近な代表的物質、骨を描いています。

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