実存的孤立が不安バッファーを弱体化
自尊心や信仰といった「不安バッファー」には、「避けられない死への不安」や「人生の無意味さ」などの実存的不安を和らげる緩衝材としての機能があります。
不安バッファーは究極的には、社会的検証を通じて構築・維持されます。つまり、不安バッファーの強度と有効性は、周囲にいる他者が「自分の世界観は意味があり、正当だ」ということにどの程度同意するかに、一部依存しているということです。
ヘルム氏はこのことから、「実存的孤立が不安バッファーの働きを弱める」という結論を導き出しています。言い換えると、自分の経験の妥当性が社会に認められないという経験が、不安バッファーを弱体化する作用を持つということです。
また、この論文で報告しているすべての調査を通じて、実存的孤立と孤独が、同じ効果を生むわけではないことが分かりました。実存的孤立は孤独の一形態では決してなく、二者は似て非なるものであるということです。