Point
■実存的孤立を強く感じる人ほど、死を連想する傾向が強いことが判明
■実存的孤立とは、「自分の経験は自分だけのもので、他の人には決して理解できない」という内的な経験のこと
■実存的孤立は、不安を和らげる緩衝材として働く自尊心や信仰などの「不安バッファー」を弱体化する
「実存的孤立」という言葉を聞いたことがありますか?
それは単なる寂しさや社会的孤立とは違って、もっと内的なものです。「自分の経験は自分だけのもので、他の人には決して理解できない」といった主観的な感覚とも言うことができます。
この実存的孤立を強く感じる人ほど、死を連想する傾向が強いことが最近の研究で明らかになりました。米ミズーリ大学のピーター・ヘルム氏らによる本論文は、「Journal of Research in Personality」に掲載されています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0092656618302319
2つの調査から見えてきた相関
ヘルム氏らは、心理学を専攻する大学生1,545名を対象に2つの調査を行いました。
1つ目の調査は、被験者に「大抵の場合、他の人は私の経験を理解しない」などの文に、どの程度同意するかを尋ねるというものでした。これにより、各被験者が感じている実存的孤立が計測しました。
また、2つ目の調査では、単語穴埋めクイズによって死の連想への近接性が測られました。このクイズは、ある単語に欠けている文字を回答するというもので、完成する単語は死に関連するものか、そうでない中立的なものかのどちらかでした。たとえば、co__seの場合、course(方向)とcorpse(死体)のどちらかを作ることができます。
回答を分析した結果、実存的孤立を感じることが、死を連想する傾向と繋がっていることが明らかになったのです。