一般化可能性は限られるが…
ヘルム氏らはその後、227名の被験者を対象に追跡調査を行い、実存的孤立を感じさせるトピックに晒された被験者は、孤独や中立的なトピックに晒された被験者よりも、死を連想する傾向が強いことを示しました。
ただし、92名を対象に行った2回目の調査では、同様の結果が再現されなかったため、実存的孤立と死の連想の間にはっきりとした因果関係があることは断定できませんでした。
ヘルム氏は、実存的孤立が不安バッファーを弱体化させる効果は比較的小さいため、それだけで全体像が説明できるわけではないと説明しています。また、今回の研究が1つの大学に通う大学生だけを対象に行われたものであることから、文化的背景や年齢などが違えば異なる結果が得られる可能性もあると弁明しています。
このように一般化可能性に限りはあるものの、この研究が将来に繋がる重要な情報を私たちに提供してくれていることに違いはありません。
「こうした研究が長い時間を掛けて、複雑化が進む社会における人間関係や、自分が周囲に評価・理解されていることを個人が感じる仕組みを、より細やかに理解するための手助けになることを望んでいます」と、ヘルム氏は語っています。
これまであまり着目されなかった「孤独のパターン」ですが、思うような結果が出なかったとはいえ、着目され研究されることにまずは意義があるのではないでしょうか。