永久凍土に眠っていた「黒毛の“子犬”」をめぐる10年越しの謎
2011年、シベリアのトゥマット村近郊で、象牙ハンターが永久凍土からよく保存された動物のミイラを発見しました。
その姿はまるで眠っているようで、皮膚や毛、歯、さらには胃の内容物までが残っていました。
その4年後、同じ場所からもう1体のミイラが見つかりました。
2頭とも非常によく似た「黒い毛の子犬」のような外見を持っていたことから、科学者たちはこれらを「トゥマト・パピー」と呼ぶようになります。

重要なのは、この2体の発見場所の近くに「人間が加工した痕跡のあるマンモスの骨」があったことです。
このことから、「家畜化された初期の犬ではないか」「これらの子犬は人間とともに暮らしていたのではないか」と推測されてきました。
しかし、外見が犬に似ているからといって、それが家畜化の証拠とは限りません。
そこで今回、ヨーク大学を中心とした研究チームは、このミイラを「包括的かつ多角的」に調べ直すことにしました。
まず、骨のサイズや形状を詳細に測定することで、現代のイヌやオオカミと比較しました。
また胃の内容物を分析し、彼らが何を食べていたかも調べました。
さらに遺伝子解析により、「トゥマト・パピー」が遺伝的に現代のイヌと近い存在なのかも確認されました。