映画『ジュラシック・パーク』の科学的な間違いトップ10
映画『ジュラシック・パーク』の科学的な間違いトップ10 / Credit: jp.depositphotos
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実は間違いだった?映画『ジュラシック・パーク』の真実10選

2021.11.27 Saturday

スピルバーグ監督の大ヒット映画『ジュラシック・パーク』(1993)。

本作がきっかけで、恐竜好きになったり、古生物学者になろうと決心した人も多いでしょう。

しかし一方で、恐竜学の歴史は非常に浅く、今も毎日のように新知見や新種の化石が発見され続けています。

そのため、30年近くも前に公開された本作には、科学的事実と異なるシーンがたくさん見受けられるのです。

そこで今回は、実は間違いだった『ジュラシック・パーク』の真実10選を紹介していきます。

※ジュラシック・シリーズは全部で5作公開されており、1作目以外の作品に触れている箇所もあります。

Here’s Just How Wrong Jurassic Park Is About Dinosaurs https://www.ranker.com/list/factual-inaccuracies-in-jurassic-park/beth-elias?ref=browse_list

1.蚊から「恐竜DNA」は抜き出せない

映画内で、恐竜をどのように蘇らせたか覚えているでしょうか。

琥珀の中に保存された蚊から恐竜の血液を取り出し、そこからDNAを抽出するというものでした。

しかし、これは本当に可能なことなのでしょうか。

蚊が大量の血を吸うことに成功した後、すぐに木の樹液につかまって、大人しく琥珀に保存されなければなりません。

専門家いわく、この確率は非常に低く、もし恐竜DNAが保存されていたとしても、完璧なDNAサンプルを抽出するのはほぼ不可能とのこと。

恐竜を復活させられるほどのDNAはさすがに手に入らないでしょう。

2.肉食恐竜に「羽毛」がない

肉食恐竜には「羽毛」があった?
肉食恐竜には「羽毛」があった? / Credit: jp.depositphotos

映画に登場する肉食恐竜に顕著なのは、羽毛が生えていないことです。

恐竜は大きく分けて、「鳥盤類」と「竜盤類」に分類されます。

鳥盤類の方には、トリケラトプスやハドロサウルス、ステゴサウルスなどの草食恐竜が存在します。

一方で、竜盤類は肉食恐竜を代表とし、中でも「獣脚類」には、ティラノサウルスやヴェロキラプトルなどの狂暴な肉食種が含まれます。

そして、近年の研究により、獣脚類こそが、現代の鳥類の祖先だったと判明したのです。

それを支持するかのように、羽毛の痕跡を残した獣脚類の化石が発見され始めており、専門家たちも今では「肉食恐竜のほぼすべてに羽毛があったのではないか」と考えています。

現在の図鑑では、ティラノサウルスも羽毛を生やした状態で描かれ始めています。

ただ、映画の公開当時は分かっていなかったことなので、「間違いだ!」と非難しては失礼ですね。

3.化石発掘に「音波スキャン」は使わない

もし化石の発掘に参加する機会があれば、『ジュラシック・パーク』で観たものとはまったく違う、地味な作業であることが分かるでしょう。

映画では、化石の探索に、地中をスキャニングできる音波技術を用いていました。

それによって、どれくらいの深さにどんな恐竜の骨が埋まっているか一目瞭然で分かるのです。

しかし、実際の発掘現場では、音波技術はかなり不正確なので、役に立つことはほぼありません。

ましてや映画のように、化石の全体像がくっきり浮かび上がることもないでしょう。

実際は、ショベルカーで岩の塊を掘り出して、それを手作業で細かく割りながら、化石を探すのが主流です。

映画ほどスマートではなく、本当に「骨の折れる」作業なのです。

4.ディロフォサウルスは「毒」を吐かない

ディロフォサウルスは、ジュラ紀(約2億130万〜1億4550万年前)の前期に存在した恐竜で、全長は尻尾を含めて5〜7メートル。

劇中では、首元からエリマキトカゲのようなフリルを広げ、ヘドロのような毒を吐き飛ばしていました。

とても面白い特徴ですが、実際に毒を吐いていたかどうかは誰も分かりません。

原作小説(1990)でも、アゴが貧弱なため、麻痺作用のある毒を吐いて狩りをしていたと描写されています。

しかし、化石から毒を吐いた事実など分かるわけもなく、現在では、首元のフリルも存在しなかったとされています。

ちなみに、研究が進んが現在、ディロフォサウルスの復元像は下のように変わりました。

現在のディロフォサウルス像
現在のディロフォサウルス像 / Credit: ja.wikipedia

5.恐竜DNAは「ドミニカ産の琥珀」では手に入らない

ドミニカで採取された琥珀
ドミニカで採取された琥珀 / Credit: Elisabeth / Wikimedia Commons / CC-BY 2.0(Ranker)

第10位の続きのような話ですが、劇中に登場した琥珀は、中南米のカリブ海に浮かぶドミニカで採取されたものでした。

実際に、ドミニカでは古生物を保存した琥珀がよく見つかっており、一般向けにも販売されています。

映画の反響もあってか、『ジュラシック・パーク』の公開後、ドミニカ産琥珀の売り上げは500%も増加したそうです。

ところが、ドミニカ産琥珀は、新しいもので1500万年前、古くても4000万年前のものがほとんど。

恐竜は6500万年前に絶滅していますから、その中に恐竜DNAは存在しません。

これまでに見つかった最古の琥珀でも、1億3000万年前のクモを保存したものです。

恐竜時代ではありますが、クモが恐竜の血を吸うことはないでしょう。

6.パーク内の「植物」はどうやって用意したのか?

恐竜時代の植物をどう再現したのか
恐竜時代の植物をどう再現したのか / Credit: jp.depositphotos

恐竜を復活させたのは良しとしても、パーク内に生い茂る恐竜時代の植物はどこから来たのでしょうか。

生物というのはそれ単体では生きていけず、身体に合った環境が必要です。

恐竜時代と現代の森林は大きく違うので、ただ単に、復活させた恐竜をすでにある森に放せばいいというものではありません。

残る方法は、中生代の植物をクローン技術で再現することですが、専門家は、これも基本的に不可能と言います。

確かに、植物の化石は存在するものの、大半は植物の痕跡を残した印象化石ばかりです。

もしクローン化に成功しても、恐竜を養うほどの森林を作るには、どれだけの時間と労力がかかるのでしょうか。

7.トリケラトプスの「うんち」は大きくない

パーク内を回る中で、病気で弱ったトリケラトプスをいたわる印象的なシーンがあります。

そして、その側には山のように大きなうんちがありました。

恐竜のサイズからすれば、それぐらいのうんちは簡単にしそうですが、実際はそれほど大きくなかったことが分かっています。

恐竜のうんちは、コプロライト(糞石)と呼ばれる化石として残されています。

それを調べると、ティラノサウルスでも最大で44センチほどです。

劇中のように、恐竜の大きさに匹敵するようなコプロライトは見つかっていません。

ただ、制作陣の肩を持つなら、パーク内の職員が、トリケラトプスの数日分のうんちを一か所に集めたとも考えられます。

8.ブラキオサウルスは「くしゃみ」ができない

ブラキオサウルスは、約1億5400万〜1億5300万年前に存在した首の長い草食恐竜です。

劇中では、樹上の子どもたちに近寄ってきて、草を食み、大きなくしゃみをしていました。

ところが、専門家によると、この心温まる印象的なシーンも創作だと言うのです。

ブラキオサウルスは、体重62トン、体長24メートル、体高16メートル(ビル4階建に匹敵)もあり、積極的に歩いたり、勾配を上ったりすることはできなかったと推測されています。

この体格でくしゃみをしたと仮定すると、強大な圧力が長い首を伝って頂上に達したとき、頭が爆発する可能性が高いというのです。

そのため、首の長い恐竜はおそらく、くしゃみができなかったと考えられています。

9.大人気のヴェロキラプトル、実は「七面鳥サイズ」

ヴェロキラプトルは、ジュラシック・シリーズを通して、とても人気の高い恐竜です。

『ジュラシック・パーク』では、有名なキッチンシーンで子どもたちを恐怖に陥れたり、『ジュラシック・ワールド』では、一転して味方となり、主人公のバイクと並走するカッコいいシーンがありました。

サイズも大型バイクと同じくらいあり、攻撃力に優れていました。

しかし、これも科学的根拠はありません。

ヴェロキラプトルは、約8300万〜7000万年前の東アジアに生息しました。

化石から推定される実際のサイズはかなり小さく、大人でも七面鳥ほどしかなかったと言われています。

また、彼らの最高速度は時速60キロほどとかなり速いですが、全速のバイクと並走するほどではなかったでしょう。

10.ティラノサウルス、実は「鈍足」だった

シリーズを通して、最も有名なシーンと言えば、巨大なティラノサウルスに追いかけられるシーンでしょう。

主人公たちは、車に乗って全力で逃げますが、それでも追ってくる姿は身の毛もよだつ恐さです。

ところが、近年の研究によると、もしティラノサウルスが映画のような速度で走ったら、足がポッキリ折れてしまうことが分かってきました。

研究者らは、コンピューターモデリングを用いて、Tレックスが時速60〜70キロで走ると、骨格が許容できないほどの負荷がかかる、という答えを出しています。

実際は、時速10〜20キロほどの速さで、それも「走る」というより「早歩き」に近かったろうと言われています。

陸上選手なら割と簡単に逃げ切れそうです。ただし、足がすくまない限りは…

まとめ

このように、ジュラシック・シリーズには自由な創作がたくさん盛り込まれていますが、かと言って、すべてがデタラメなわけではありません。

劇中で描かれていた「共食い」や恐竜同士の「コミュニケーション」は、化石記録から実際にあったと考えられています。

そもそも、恐竜の実像は化石からしか判断できませんから、専門家の見解にも間違いは多々あるでしょう。

そして、本作が子どもから大人まで、幅広い層の人々を魅了したことは間違いありません。

上に紹介したポイントを確認するためにも、『ジュラシック・パーク』を見返してみてはいかがでしょうか。

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