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Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
paleontology

Tレックスの化石を富裕層が買い漁り、研究の妨げになっていることが判明

2025.04.17 12:00:10 Thursday

今、世界の超富裕層らが、ティラノサウルス・レックスの化石を高額で買い漁っており、それが科学研究の現場に深刻な影響を与えていることがわかりました。

この事実を明らかにしたのは、米カーセッジ大学(Carthage College)の古生物学者であるトーマス・D・カー(Thomas D. Carr)氏です。

カー氏はT.レックスの発育過程を研究する第一人者であり、今回、化石の市場流通が学術研究に与える影響を初めて体系的に調査しました。

研究の詳細は2025年4月10日付で科学雑誌『Palaeontologia Electronica』に掲載されています。

‘Dispiriting and exasperating’: The world’s super rich are buying up T. rex fossils and it’s hampering research https://www.livescience.com/animals/dinosaurs/dispiriting-and-exasperating-the-worlds-super-rich-are-buying-up-t-rex-fossils-and-its-hampering-research
Tyrannosaurus rex: An endangered species https://doi.org/10.26879/1337

Tレックスの化石が富裕層によって独占されている

T.レックスの化石が近年、日本円にして数十億単位の金額で取引されていることをご存知でしょうか?

特に完全に近い骨格標本は、ハリウッド俳優やアートコレクター、アラブの王族など、世界の富豪たちにとっては投資対象であり、金持ちをアピールするためのステータスシンボルともなっています。

例えば、2020年には「スタン」と呼称されているT.レックスの骨格が3,180万ドル(約48億円)で落札され、大きな話題となりました。

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Tレックス「スタン」の骨格標本/ Credit: ja.wikipedia

では、その影響はどこに出ているのでしょうか?

カー氏は今回、書籍、博物館の所蔵データ、ニュース記事、オークション記録、そして逸話的な情報まで徹底的に洗い出し、科学的に価値のあるT.レックス標本の実態を調査しました。

その結果、科学的に有用なT.レックスの標本は現在、公的な博物館や研究機関に61点しか存在しないのに対し、富裕層による私的または商業的な所有にあるものが71点と、それを上回っていることが判明したのです。

特に問題なのは、若年個体や亜成体の標本が14点も富裕層によって私有されていたことです。

若年個体の化石はTレックスの成長過程を明らかにする上で絶対に欠かせない化石であるため、これは科学的に大きな損失となっています。

さらに商業的な化石業者が現在、博物館の2倍以上の速度でT.レックスの化石を発見しているという実態も明らかになりました。

こうした業者が発見した化石のうち、公的機関に所蔵されたのはわずか11%に過ぎないとのことです。

つまり、残りの大部分の化石は研究者の手の届かない場所や富裕層の手に渡ってしまっているのです。

次ページ憤りを隠せないカー氏

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