「絶滅したダイアウルフが復活した」という報道が広まる
ダイアウルフ(Aenocyon dirus)は、更新世の北アメリカ大陸に君臨していた大型肉食獣です。
見た目こそ現代のオオカミ(Canis lupus)に似ていますが、実際には異なる存在でした。

彼らの体重は平均で約68kg、頭胴長約125cm、尾長約60cm、体高約80cmとオオカミよりも大きく、どっしりとした体つきであったと推定されています。
顎の力も極めて強力で、大型の草食動物を狩るのに適した構造をしていました。
化石記録によれば、主にマンモスやバイソンなどの死骸を漁っていたと考えられています。
しかし気候変動と大型獣の絶滅により、ダイアウルフ自身も約1万3千年前に地上から姿を消しました。
その後はカリフォルニア州ロサンゼルスののタールピットなどで大量の化石が見つかり、古生物学者の関心を集めてきました。
こうした中、2021年に設立されたスタートアップ企業Colossal Biosciencesが「絶滅種の復活」をビジネスとして掲げ、「ダイアウルフ・プロジェクト」を本格始動させたのです。

彼らは古代DNAを収集・解析し、その情報をもとに現存する動物(今回はオオカミ)に遺伝子編集を施して、できる限りダイアウルフの姿・特性に近づけようとしました。
そして2024年10月、このプロジェクトで誕生したオスの双子に「ロムルス」「レムス」、2カ月後に誕生したメスに「カリーシ」という名がつけられました。
この真っ白で可愛らしい赤ちゃんたちの誕生は、「絶滅したはずのダイアウルフが、ついに現代に復活した」と大きく報道されました。
しかし、当然ながら疑問が残ります。
本当にそれは「ダイアウルフの復活」と言えるのでしょうか?
それとも、ただの“ダイアウルフ風”の新種生物なのでしょうか?
次は、その科学的実態に迫ってみましょう。