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psychology

幼少期に虐待を受けた人は「自分の体への信頼度」が低下、どんなデメリットが?

2025.07.08 23:00:41 Tuesday

「心臓がドキッとした」「胃がムカムカする」「お腹がグルグル鳴った」

そんな体の内部の感覚を私たちは日常的に感じとっています。

けれど、もしこの「自分の体の声」が聞こえなくなったら?

あるいは聞こえていても、それを信じられなくなったら?

独ドレスデン工科大学(TUD)の最新研究によると、幼少期に情緒的な虐待やネグレクト(育児放棄)を受けた人は「自分の体に対する信頼感」が低くなる傾向があることが明らかになりました。

自分の体への信頼感が薄まると、どんなデメリットが起こるのでしょうか?

研究の詳細は2025年7月7日付で科学雑誌『Nature Mental Health』に掲載されています。

Emotional abuse in childhood may erode trust in one’s own body https://medicalxpress.com/news/2025-07-emotional-abuse-childhood-erode-body.html
A meta-analytic review of child maltreatment and interoception https://doi.org/10.1038/s44220-025-00456-w

内受容感覚―「自分の体の声」を聞く感覚

内受容感覚とは何か?

内受容感覚(Interoception)とは、心拍、呼吸、空腹、満腹、喉の渇き、胃腸の動き、筋肉の緊張、体温、痛みなど、身体の内部から発せられる信号を感じ取る能力のことです。

これは視覚や聴覚と同じく私たちに備わっている感覚のひとつで、私たちは無意識のうちにこれらの信号を使って、体の状態を把握しています。

たとえば、「なんとなく不安」「心臓が速くなっている」「お腹がすいてきた」といった気づきは、すべて内受容感覚によってもたらされます。

この感覚は単なる“体のセンサー”ではありません。

むしろ、感情の形成、ストレスへの対処、自己認識、そして直感的な意思決定に深く関与しているのです。

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内受容感覚が弱まると、何が起きる?

もしこの感覚が鈍くなったり、歪んで伝わったりすると、さまざまな問題が生じます。

まず、体のニーズに気づけなくなります

空腹に気づかず食事を忘れたり、過剰に食べすぎてしまったり、体調の変化に気づくのが遅れたりする可能性があります。

また、感情と結びついた身体の反応を認識しにくくなるため、怒りや悲しみ、不安といった感情を適切に認識・コントロールできなくなることがあります。

結果として、情緒が不安定になり、ストレスをうまく処理できなくなるのです。

このような内受容感覚の異常は、うつ病、不安障害、摂食障害などの精神疾患とも強く関係していると考えられています。

さらに、内受容感覚の中でも重要なものの一つが「自分の体への信頼感(body trust)」です。

これは、自分の身体からの信号に対して「これは本当に自分が感じていることだ」と信じられるかどうかという感覚です。

そして今回の研究は、まさにこの「身体への信頼感」が、幼少期の情緒的虐待と深く関係していることを示しました。

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