若者を中心に世界各地で盛り上がりを見せる音楽フェス。現状での開催は不可能ですが、コロナ終息後のフェスを楽しみにしている人も多いでしょう。
その一方で、近隣の野生生物にとっては大きなストレスになっているようです。
米・マイアミ大学ローゼンティール・スクールの研究によると、ラボ内で飼っているアンコウ類のコルチゾール値が、音楽フェス中に急上昇していたことが判明しました。
コルチゾールは、ストレスによって分泌が促進されるホルモン物質であり、分泌量が多いと血圧や血糖を高め、不妊や免疫レベルの低下を引き起こします。
音楽フェスの騒音は、魚にどれほどの悪影響を与えているのでしょうか。
天敵に襲われる時と同じストレスを感じていた
フロリダ州・マイアミでは毎年、エレクトロニック・ダンス・ミュージックの祭典「Ultra Music Festival」が開催されています。研究チームは、昨年3月に開催されたUMF中に、騒音が魚に与える影響を検証しました。
実験では、ラボ内で飼っているアンコウ類のストレス値を「UMFの開催前」と「初日の夜」とで比較しています。その結果、血中のコルチゾール値が、開催前の4〜5倍に跳ね上がっていたのです。
研究チームのダニエル・マクドナルド氏は「このストレス反応は、天敵であるハンドウイルカの声を聞いたときに非常に似ている」と指摘します。
これに加えて、水中における騒音の変化も調べるため、ハイドロフォン(水中録音機)をラボ内の水槽と、UMFステージ近郊の水域にセットしました。
結果、ラボ内の水槽で7〜9デシベル、近郊の水域では2〜3デシベルの上昇が確認されています。これは魚の生態にネガティブな変化を与えるに十分な数値の変化です。
幸か不幸か、今年3月に開催予定だったUMFは、新型コロナウイルスの影響で中止されています。
これまでの研究でも、水中の騒音は、魚の聴覚を狂わせ行動異常を引き起こし、生殖や産卵を混乱させることが証明されていました。
同チームのマリア・カルトラーノ氏は「今回の調査では、騒音が与える長期的な悪影響までは判断できないが、一時的にも生態系に害悪を与えることは確か」と話します。
音楽は胎教やリラックス効果など良い面もたくさんありますが、あまりに騒々しいのは魚も嫌いなようです。
研究の詳細は、「Environmental Pollution」に掲載されています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0269749119371994
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