髪の毛と経済状況
なぜ経済状態が毛髪に反映されるのでしょうか?
食生活に着目して見た場合、社会経済的地位(SES)が低い低所得の地域では、トウモロコシ類の同位体が優勢であることがわかりました。
これはトウモロコシ飼料を食べた家畜の動物性タンパク質を摂取しているためですが、こうした飼料飼育は、高密度家畜飼養経営体(CAFO)と呼ばれる大型の倉庫のような場所で集中的に大量の家畜を工業的に生産する際に用いられています。
トウモロコシ飼料の同位体が多い地域は、集約畜産で生産された安価な肉が多く提供されているということになり、地域の経済状況と毛髪の同位体数に相関が生まれることになるようです。
この傾向は、地域のSESと共に、肥満率や健康状態とも潜在的な関連を持っていると言います。
毛髪同位体の分析から、意外なことに地域社会の経済状況や健康リスクまで評価できるようになってしまったというのはなんとも意外な結果です。
研究者はこの測定結果が、何らかの偏見によってもたらされた値と誤解されないよう、あくまで食事調査から反映された結果であることを強調し、異なる年齢層や社会経済層の間で食生活がどのように変化するか理解するための道具になるものだと語っています。
この研究は、ユタ大学の研究者James R. Ehleringer教授を筆頭とした研究チームより発表され、『米国科学アカデミー紀要:PNAS』に8月3日付けで掲載されています。
https://www.pnas.org/content/early/2020/07/29/1914087117