カーボンナノチューブとフラーレンの発見は日本の研究がかかわっている
日本は、炭素を基盤としたナノテクノロジーの分野で世界をリードしている国の一つです。
特に、カーボンナノチューブとフラーレンは、その代表的な例として挙げられます。
これらの微細な炭素材料は、日本の研究者たちによって重要な発見がなされ、現代の科学と技術における革命的な材料となっています。
カーボンナノチューブは日本の研究によって発見された
カーボンナノチューブは日本の飯島澄男教授が1991年に発見した、数ナノ(10億分の1)メートルの極細チューブです。
カーボンナノチューブはその丸まり方、太さ、端の状態などによって、電気的、機械的、化学的特性などに多様性を示しています。
このため、強度が高くて軽量、また電気を良く通す特性を持つことから、次世代の電子機器や新材料の開発において中心的な役割を果たしています。
また近年ではカーボンナノチューブの内部に原子や分子を詰め込むことで、新しい機能を持つ素材の開発が進められています。
たとえば東北大学で行われた研究では、チューブ内部に有機分子を収納することで、電気特性の制御を行うことに成功しました。
また豊橋技術科学大学ではチューブ内に赤リンを詰め込んだリチウムイオン電池の電極を開発し、既存のグラファイト電極に比べて電池容量を2倍以上にすることに成功しました。
フラーレンの予言も日本人が初
一方フラーレン(C60)は60個の炭素原子がサッカーボール状に結合した直径0.7ナノメートルの球状分子で、1970年に大澤映二により予言され、1985年にKroto, Curl, Smalley により発見されました。
フラーレンはその特異な形状と電子的特性から、有機太陽電池、医薬品の配達システム、さらには超伝導材料としての応用が期待されています。
フラーレンは日本国内で工業的な大量生産が開始されており、安価・大量に入手可能な「ナノ物質」の代表となっています。
カーボンナノチューブと同様にフラーレンも輸送カーゴとしての研究が進んでおり、京都大学で行われた研究ではフラーレン内部に単一の水分子を閉じ込めることに成功しました。
他にもこれまでヘリウムや水素、窒素や一酸化炭素、過酸化水素などもフラーレン内部に閉じ込められることが判明しました。
このようにカーボンナノチューブやフラーレンのような炭素構造体の多くが現在、内部に詰められるものとセットになって研究が進んでいます。
一次元気体とは何なのか?
私たちの身の回りには酸素や窒素、二酸化炭素をはじめとしてさまざまな分子が気体として存在しており、古くからそれらがどんな性質を持つかが調べられてきました。
しかしナノテクノロジーの進歩によって、分子や原子を板に挟んだり細いチューブに詰め込むことで、厚さが分子1つ分しかない二次元物質や分子が直線に配置された一次元物質を作成できるようになってきました。
また驚くべきことに、二次元物質や一次元物質は成分が同じでも、母体となる三次元物質と大きく異なる性質を持つことがわかってきました。
その中で最も有名なのは、平面的な構造を持つグラフェンの電子でしょう。
三次元的な炭素の塊の場合、内部に含まれる電子は原子核との兼ね合いによって、本来の質量とは異なる有効質量を持ちます。
(※有効質量は電子が古典物理的に従って動くとした場合に想定される質量に相当する数値です。実際の電子は量子力学的な性質があるため本来の質量と有効質量は少し異なります)
しかしグラフェン内部の電子の有効質量は、驚きのゼロとなっています。
そのためグラフェン内部の電子はまるで光のように、決して止まることなく常に同じ速度で飛び回っています。
このように分子や原子が三次元的に配置されていない場合、予想もつかないような新たな性質を獲得することがあるのです。
そのため現在の化学ではさまざまな方法を用いて、既存の分子や原子を二次元的、一次元的に配置し、どんな物性を獲得したかを調査する研究が進んでいます。
しかし二次元物質は板に挟んだり剥がしたりなどして作るイメージが浮かびますが、一次元の気体の場合は、どうやって作るのでしょうか?