生きた昆虫を「制御する」時代へ
ZoBorgのベースになったのは、ゾフォバス・モリオ(Zophobas morio)という大型のゴミムシダマシの一種です。
この昆虫は、幼虫の姿が「スーパーワーム」とも呼ばれ、プラスチック(ポリスチレン)さえも分解する能力が知られるなど、多くの面で注目されていました。
研究チームはこの昆虫に、重さわずか160ミリグラムの無線バックパックを装着。
このパックには赤外線受信機やマイコンが内蔵されており、前翅(エリトロン)や背中に埋め込まれた電極に微弱な電気刺激を送ることで、方向や速度をコントロールできるようになっています。

特に興味深いのは、片側の前翅だけを刺激すると、昆虫が反対側に横歩きするという現象です。
これにより、昆虫を意図した方向へ誘導することが可能になります。
また、両方の前翅を同時に刺激すると、前進や加速が促されることも判明しました。
これらの運動は、昆虫本来の神経系と筋肉を利用しており、低電力で高効率な制御が可能です。
さらに触角や足のセンサーが自然のまま残されているため、昆虫は自律的に障害物を感知し、地形の変化に柔軟に対応できます。