真空はエネルギーに満ちている
真空の力を理解するには、この宇宙には真の意味での真空がないということを知る必要があります。
ある空間から全ての原子や電子を取り去り、絶対零度まで冷却したとしても、その空間のエネルギーはゼロにならず、空間内部では仮想粒子や光子の生成と消滅が繰り返されています。
これらの絶対零度の真空状態でも生じる力は「真空の力」あるいは「ゼロポイントエネルギー」と言われています。
なぜ一切の物体や熱エネルギーのない空間で粒子や光子の生成と消滅が繰り返されるのか疑問に思うかもしれません。
これは簡単に言えば、ビックバンから続く宇宙の進化の中で、現在の空間は、まだまだ何もない所から粒子や光子を生成する「元気」があるから…と言えます。
1943年、オランダのカシミール氏は、この現象を確かめる実験を行いました。
実験装置の中核部分は上の図のように極めてシンプルで、僅かな隙間をあけて並んだ2枚の板からなります。
カシミール氏は、外側の大きな空間から発する真空の力が、板の間の小さな空間で生じる真空の力を上回っていると考えたのです。
実際に実験を行い板にかかる圧力を計測した結果、カシミール氏の仮説の正しさが証明されました。
板と板の間の空間を狭めば狭むほど、外部の真空の力と内部の真空の力の間に差が開き、隙間の距離が10nmに達した時、隙間を押し潰そうとする力は1気圧にも達したのです。
真空の力は目にはみえませんが、条件次第では非常に大きな力になることがわかりました。
そしてこの真空の力の差にはカシミール氏の名をとって「カシミール効果」と名がつけられました。