カシミール効果は古典物理学的な力を一切使わず物体を移動できる
今回の研究ではカシミール効果により巨視的な物体を移動させることに成功しました。
しかしカシミール効果は(残念ながら)永久機関にはなりえません。
例えば上のような装置を作ったとします(以下はあくまで架空の例です)。
この装置では、変形する金属膜の下に部品を取り付け、カシミール効果で上から押し込まれる圧力を、土台の内部に仕込んだ発電モーターを回す力に変換します。
こうすることで、発電の瞬間に限れば「真空の力」に由来する力を使うことになります。
ですがこの装置の場合、金属膜を土台に近づけたり遠ざけたりする動きは、外部の別の力に頼っています。
そのため、このような外部の力を合算した場合、カシミール効果で得られるエネルギーは、カシミール効果が起こる状況にするのに必要な状態を作るエネルギーよりも少なくなってしまうのです。
しかしながら、最後の一押しにのみ限定すれば、古典的なあらゆる物理量に依存しないまま金属膜を動かせた…という事実は変りません。
カシミール効果は永久機関にはなりえませんが、将来における顕微鏡サイズのデバイスの微小な駆動部品にとって、必要不可欠な現象になるかもしれませんね。
研究内容はアメリカ、カリフォルニア大学のJMパテ氏らによってまとめられ、8月3日に学術雑誌「Nature physics」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41567-020-0975-9
https://arxiv.org/pdf/2004.05983.pdf