ネットワークの類似性を数学的に解明
ニューロン(特に小脳)と銀河の類似性を調べるにあたり、2人の研究者たちはまず最初に、双方の密度のゆらぎ幅に着目しました。
結果、小脳の神経回路網は最も密な部分が1マイクロメートル幅で、最も疎な部分が丁度100倍の100マイクロメートル幅で分布していることを突き止めます。
驚くべきことに、この密度のゆらぎ幅は、宇宙でも同じでした。
「銀河の網」の最も密な銀河間の間隔は500万光年であり、最も疎な部分はニューロンと同じく100倍にあたる5億光年だったのです。
自然界には網目状をとる多くの構造が存在しますが、密度のゆらぎ幅まで一致することは多くありません。
次に研究者たちは脳のニューロンネットワークと銀河の網の結節点の性質について調べました。
1つの結節点に3本の線が伸びている網と、100本の線が伸びている網では、同じ「網目模様」であっても大きく構造が異なる別物だと判断できます。
分析の結果、ニューロンの場合は1つの結節点に4~5本の軸索が伸びている一方で、銀河の網の結節点にはおおよそ4本の銀河の連なりが伸びていました。
さらにニューロンネットも銀河の網も、中央の結節点の周りに接続のクラスターを作りやすいという同じ傾向を示しました。
そして最も興味深い点として、ネットワークが記憶できる情報容量を比較した結果、両者はほぼ同じスケールの量を保持できることが判明したのです。
近年行われた他の研究でも、人間の脳のネットワークは理論上2.5ペタバイト、銀河の網は4.3ペタバイトの情報を記録できることを示しています(全てを情報記憶に使った場合)。
ネットワークが保持できる記憶容量は僅かな構造の違いが指数関数的な差をうみだすことが知られており、そのような意味では2.5ペタバイトと4.3ペタバイトは非常に類似性が高い記憶容量だと言えます。
どのような理由かは不明ですが、銀河の網の記憶容量は、経験豊かな人間の一生分の情報量にあわせたサイズになっているようです。