誰もが見過ごしていた些細な現象
発見の切欠は偶然でした。
ある日、デビッド・ジェムズ氏は卵を産んだ後の何匹かの線虫が、茶色の液体を体から分泌していることに気付きます。
通常、このような些細な変化は見逃されてしまいますが、ジェムズ氏は分泌された体液の出所を調べると同時に、分泌物の成分を分析しました。
結果、この体液は線虫の卵を産む開口部から流れてきたもので、卵黄タンパク質が含まれていることが判明します。
そこでジェムズ氏は「線虫も授乳しているのでは」と仮説を立てました。
真の授乳は哺乳類特有のものですが、ハトやクモなど、子孫に対して栄養価に富む分泌物を与える動物は決して珍しくありません。
線虫も、見逃されていただけで、授乳の習性があるかもしれません。
ただ問題は、どうやって証明するかでした。