コンピューターモデルで診断!どっちの説が正しい?
生物進化の複雑なプロセスを理解する上で、系統樹が用いられます。
研究チームは、「海綿動物」と「有櫛動物」のそれぞれを最初に出現した動物に据えた、2つの系統樹を作成しました。
こちらです。
どちらを支持するかは、生物学者の間でもパックリと二分されています。
チームは今回、過去に得られた両者の全ゲノム配列をもとに、コンピューターモデルを用いて、どちらがより正確な進化の系統樹をつくるかをシミュレートしました。
その結果、正確な系統樹を再構築できたのは、驚くことに「有櫛動物ファースト」の場合のみだったのです。
反対に、海綿動物を最初に据えると、正確な系統樹にたどり着きませんでした。
ということは、有櫛動物こそが最初に誕生した動物だったのでしょうか。
これについて研究チームは「懸念すべき問題がある」と述べます。
それは、有櫛動物の進化の速度が、他の多くの生物に比べて異常に速かったということです。
進化速度が速すぎると、コンピューターモデルがそれをバイアス(先入観)のかかった情報として取り入れ、その生物が実際よりずっと早い時期に誕生したと誤認することがあります。
これは以前から指摘されている問題でした。
結局、研究チームは「有櫛動物を最初の動物とするには不正確な点が多く、何よりも進化速度のバイアスを解決する必要がある」といいます。
その上で「いくつか提示されている進化のシナリオを考慮すると、今のところは海綿動物の方が最初の動物として可能性が高い」と続けました。
コンピューターひとつに、何億年も昔の真実を解決させるのは荷が重すぎたようです。