出産時に母親のがんが子どもに移行することがある。
出産時に母親のがんが子どもに移行することがある。 / Credit:canva
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「母親の子宮頸がんが子どもの肺にうつる」症例を確認、羊水に混ざったがん細胞を飲み込んでいた (2/2)

2021.01.07 Thursday

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治せるがん、予防できるがん

近年注目されているがん治療薬に、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれるものがあります。

今回の母から移行したがんの男児には、この薬による治療が非常に有効で、投与された患者からはがんが消失する劇的な効果を示したと言います。

人間の身体には本来異物を排除する免疫機能が備わっています。

しかし、免疫があまりに強力な場合、問題のない健康な細胞まで傷つけてしまうかもしれません。そこで身体は免疫がやりすぎないようにチェックポイント(検問所)を用意して、免疫細胞にブレーキをかけているのです。

チェックポイントとは検問の意味。
チェックポイントとは検問の意味。 / Credit:canva

がん細胞はこのシステムを逆手に取って、免疫の力を抑制し、自分が攻撃されないようにしています。

これは公安の権力みたいなもので、あまり暴走させると無実の国民までしょっぴかれて被害を受けてしまいますが、かといって緩めすぎるとスパイ天国になってしまうという感じに似ているでしょう。

免疫チェックポイント阻害薬は、その名の通りこうした免疫を抑制する作用を弱める薬です。これによってがん細胞が免疫の攻撃対象になります。

人間の免疫力によってがんを治療する薬なのです。

今回のケースでは、男児のがん細胞は、本来自分の持つ細胞ではありませんでした。そのため、免疫細胞から異物として認識されやすく、免疫チェックポイント阻害薬が特に有効に働いたと考えられるのです。

これは母子で移行したがん全般に対して、この治療法が有効である可能性を示しています。

また子宮頸がんは、がんとしては珍しく明確に発症の原因が特定されていて、治療することも予防することも可能ながんです。

子宮頸がんは、皮膚や粘膜を介して伝染るヒトパピローマウイルスの感染が原因で発症します。

ヒトパピローマウイルスの電子顕微鏡画像。
ヒトパピローマウイルスの電子顕微鏡画像。 / Credit:Wikipedia

ヒトパピローマウイルスは、数百種類を超える型を持っていて、皮膚にイボができたり、尖圭コンジローマなどの性病の原因にもなっているウィルスです。

これが生殖器粘膜に長期間寄生していた場合、がん化させてしまう場合があるのです。

子宮頸がんは早期に発見された場合は、完治することが可能ながんです。また、ウィルス感染が原因のため、ワクチン接種で事前に予防することも可能ながんでもあります。

母親の健康は、生まれてくる子どもの健康にも繋がっている。
母親の健康は、生まれてくる子どもの健康にも繋がっている。 / Credit:canva

幼い子どもががんを発症するというのは、非常に悲しい出来事です。

今回のようなケースは、母親が子宮頸がんの早期発見や予防に努めることで、かなり低減させることが可能だと考えられます。

子どもの健康のためにも、母親の子宮頸がんの予防、定期検診が非常に重要であると、この研究では語られています。

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