・「自分が運動不足」と感じている人は、そうでない人と比べて71%死亡リスクが上昇する
・それにはプラシーボ効果とは逆の「ノセボ効果」など3つの理由が考えられる
「今年こそは運動する!」と新年に目標を立てたあなた。挫折していませんか?
万が一挫折してしまったあなたに朗報があります。実際に運動することだけでなく、「運動した」と意識することも重要であることが明らかになりました。
Perceived physical activity and mortality: Evidence from three nationally representative U.S. samples.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28726475
スタンフォード大学の研究者たちが、21年間、61,000人の大人の寿命について様々な尺度を用いて調査を行いました。そこでは、「どの程度運動をしていたか」だけでなく「どの程度運動したと思っているか」といった項目も調査の対象となりました。
その結果、研究者たちも驚きの事実が発覚。「自分は人と比べてあまり運動していない」と思っていた人たちは、実際の運動の頻度は変わらないにも関わらず、「運動している」と思っていた人たちよりも若くして亡くなっていたのです。
研究を行ったオクタヴィア・ザート氏は、個人的な経験からこの仮説を導き出しました。彼女がカリフォルニアの大学院に進学したとき、周りにはジムの道具を持っているような、常に運動をしている人たちばかりでした。それまでサイクリング等で「自分は運動をしている方」と思っていたザート氏ですが、そのような運動マニアたちに囲まれた後に、急に自分が不健康になってしまったように感じたのです。
そしてこの研究は、彼女の感覚が正しかったことを示しています。「自分が運動不足」と感じている人は、そう感じていない人と比べて71%も死亡リスクが上昇していたのです。
にわかには信じがたいこの事実ですが、これには3つの理由が考えられます。
1つ目は、シンプルに私たちは「運動できていない」と思うことでストレスを感じるということです。実際によく運動している人たちと会うたびに、「自分は大丈夫だろうか」といった慢性的なストレスに襲われます。
2つ目は、モチベーションの問題です。自分について「運動をよくする」アスリートのようなイメージを持っていれば、そのイメージを保つための運動を欠かすことはないでしょう。これについては2015年の研究において裏付けがあります。
3つ目は、プラシーボ効果と逆のノセボ効果があることです。つまり「運動をしていない」といったネガティブな思い込みが、実際に生理的な機能に働きかけているといったことです。なので、実際に運動をしていながらも「していない」と思い込んでいる人は、その恩恵を最大限に受け取ることができていないといえます。
ホテルの清掃員の例をみてみましょう。彼らの仕事は肉体労働です。長い廊下を往来し、重いトロリーを押し、お風呂掃除をして、シーツを取り替えます。しかし、2007の調査によれば、彼らはその仕事を「運動」とはみなしていませんでした。
そこで、半分の従業員に、彼らが実際にかなりの「運動」をしていることと、「そう思うこと」が健康にメリットをもたらすことを伝えました。そして4週間後、なんとこのグループの清掃員は、体重が減り、血圧が下がったのです。「仕事」を「運動」とみなすだけで健康にいい影響を与えたことになります。
また、私たちの年齢の意識に関して興味深い調査があります。2003年にイギリスで行われたこの調査において、7,000人の公務員が、「何歳で中年が終わり、何歳から老年期が始まるか」といった質問に答えました。
その結果、「60歳以下で老年期が始まる」と答えた人たちは、「70歳以上」と答えた人たちと比べて後に心臓病のリスクが高まったのです。この調査からも、ネガティブな意識が実際の健康に影響を与えていることがわかります。
心と体はつながっています。ネガティブな思考が実際に健康被害をもたらすことは、誰でもなんとなくわかっているのではないでしょうか。そのことが証明された今回の研究。とりあえずこの知識を活かすために、フルマラソンを走っちゃうようなド健康な人の隣にいるのは避けたほうがよさそうです。
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via: bbc / translated & text by なかしー
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