水素をどんどん失って軽くなるって、地球は大丈夫なの?
ここまでの計算を合計すると、結果的に、地球は年間約5万トン軽くなっているということになります。
そんなに? と驚く人もいるかもしれませんが、地球全体の質量から考えた場合、5万トンは非常に小さな値です。
巨大なクルーズ船の半分の質量もありません。
地球全体の質量から見た場合、年間で失われる質量は0.000000000000001%です。これは地球全体の10京分の1という量にすぎません。
しかし、失われている質量のほとんどは水素です。
水素は今後燃料としての利用も考えられていますし、水の主成分でもあります。
とても軽い水素が、毎年5万トンも失われしまったら、地球はいずれ火星のような荒野になってしまうのではないでしょうか?
この心配も、実のところ必要ありません。地球の海や大気に含まれる水素量は、失われる量に対してはるかに膨大です。
仮にこのペースで水素を失っていって、地球の海が干上がるまでの年月を計算すると数兆年掛かる結果になります。
太陽の寿命はおよそ50億年と推定されていて、そのときには地球は膨張して赤色巨星となった太陽に飲み込まれて消えてしまいます。
つまり、地球の寿命よりはるかに長いときが経たなければ地球の水素が枯渇する心配はないようです。
また、余談ではありますが、地球のコアには海水の約80倍(地球全質量の1.6%)におよぶほどの水素が含まれているという研究報告もあります。
でも、軽くなっているということは、地球の重力はだんだん弱くなっていることになるんじゃないでしょうか?
これについても、あまり関係はないかもしれません。
地球の重力は、引力と地球の自転で生じる遠心力の合力で成り立っています。
この地球の自転は、月の潮汐力の影響で徐々に遅くなっています。
自転が遅くなれば遠心力は減るので、結果的に時が経つと地球の重力は強くなってしまう可能性があるのです。
また、地球上の重力というのは実は均一ではなく、地下にどんな構造があるかによって結構変動しています。
そのため、沖縄と北海道では同じ1kgの金を計量しても、重さが1gほどズレるという事実もあります。
結局5万トン程度の水素が、毎年上層大気から失われていっても、地球の重力にとくに影響が出ることはなさそうです。
そんなわけで、長々と説明しましたが、地球は水素を失ってどんどん軽くなっていますが、その影響は特にないようです。
私たちが、ちょっとダイエットを頑張ったところであまり意味がないのと同じことでしょう。