放射線を遮断し、エネルギーにして成長する真菌
調査対象となったのは、Cladosporium sphaerospermumという名の真菌です。
これはクラドスポリウム(学名:Cladosporium)と呼ばれる真菌の一種とのこと。
クラドスポリウム自体は、私たちの身近に見られるごく普通のカビであり、クロカビと呼ばれています。
Cladosporium sphaerospermumの存在も昔から知られていましたが、最近になって放射線を防ぐ性質があると判明しました。
しかもこの菌は放射線を遮断するだけでなく、放射線を利用して成長できます。
植物が光合成によって太陽光からエネルギーを得るのと同じように、放射線からエネルギーを得ているのです。
そのためCladosporium sphaerospermumは、チェルノブイリ原子力発電所跡地のように放射線が充満している場所でも生存しています。
そして2019年、研究チームはこの真菌をISSに持っていき、シールドとしての役割を調査しました。
その結果、厚さ1.7mmの菌の膜の下の放射線量は、周囲よりも約2.17%低いと判明。
しかもISSに持ってきた真菌は、地球上よりも約21%早く成長しました。
Cladosporium sphaerospermumは放射線量が多い環境ほど早く増殖し、それにともなって厚みが増し、シールド性能もアップするのです。
これは地球から遠く離れてミッションをこなす宇宙飛行士にはぴったりな性能だと言えます。