暗い夜の草むらで、細い草の穂にとまり、おしりのあたりを黄緑色に光らせている黒いホタル No.0041

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

ホタル

Lampyridae

おしりの光で、オスとメスが合図を送り合う。
光り方は、種や地域ごとにちがう。

ナゾロジーの記事
10本
世界のホタル
2,000種以上
ゲンジボタルの点滅(西日本・東日本)
2・4秒ごと

ホタルは、甲虫のなかまのホタル科の昆虫で、世界に2,000種以上がいます。腹部の発光器でルシフェリンという物質を反応させて光り、多くの種は光でオスとメスが合図を送り合います。日本ではゲンジボタルやヘイケボタルが初夏の夜に見られます。

図鑑データ

分類
昆虫 › コウチュウ目(甲虫目)› コメツキムシ上科 › ホタル科
学名
Lampyridae(ホタル科のなかま全体の名前)
英名
firefly(ファイアフライ)、lightning bug、glowworm
漢字
蛍(螢とも書く)
種の数
世界に2,000種以上。日本では50種ほどで、その多くは南西諸島にすむ
大きさ
成虫は数mm〜30mmほど。ゲンジボタル15mm前後、ヘイケボタル8mm前後、ヒメボタル7mm前後
光るしくみ
発光器でルシフェリンが酵素ルシフェラーゼのはたらきで酸素と反応して光る。熱をほとんど出さない「冷光」
すみか
極地や砂漠などをのぞく世界中。温帯から熱帯の湿地や湿った林に多い
日本では
ゲンジボタル(本州・四国・九州の川)、ヘイケボタル(北海道〜九州の水田や湿原)、ヒメボタル(本州〜九州の森)など
食べもの
幼虫は巻貝やミミズなどをとらえて食べる。多くの種の成虫は口が退化していて、水分をとる程度
一生
卵 → 幼虫 → さなぎ → 成虫(完全変態)。成虫の期間は1〜2週間から数週間ほど。ゲンジボタルは卵から成虫まで1年ほど
見られる時期
ゲンジボタルはふつう5〜7月(九州は5月上旬から、東北は7月ごろから)。ヘイケボタルは5〜9月ごろ

ホタルとは(何科? 何の仲間? 英語では?)

ホタルは、甲虫(コウチュウ目)のなかまの昆虫で、分類では「ホタル科」というグループにまとめられます。おしりのあたりを光らせることで知られ、世界に2,000種以上がいます。甲虫としては体がやわらかいのが特徴です。英語では firefly(ファイアフライ)のほか、lightning bug(ライトニング・バグ)や glowworm(グローワーム)とも呼ばれます。

ホタル科は、コメツキムシなどと同じ「コメツキムシ上科」に入ります。ホタルに近いなかまにも光る甲虫がいて、アメリカ大陸のフェンゴデス科や、西表島で見つかったイリオモテボタル(オオメボタル科)などがそうです。ただし、これらはホタル科ではありません。

枯れ枝の上にとまる、黒い体で頭の後ろがピンク色のホタルを横から見たところ
ゲンジボタル(三重県大紀町)写真: Alpsdake(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

光らないホタルもいる

「ホタル」というと光る虫のイメージがありますが、成虫がほとんど光らない種も多くいます。夜に活動する種の多くは光で合図をしますが、昼に活動する種の多くは成虫がほとんど光らず、においの物質(性フェロモン)でオスとメスが出会うと考えられています。たとえば日本のオバボタルは、黒い体に赤い模様をもつホタルですが、昼に活動し、ほとんど光りません。

一方、卵や幼虫のころは、ほとんどの種が光ります。

ホタルはいつからいる?(恐竜時代の化石)

ミャンマーでとれる白亜紀中ごろの琥珀(こはく)の中から、ホタルの化石が見つかっています。2026年に発表された研究では、約9900万年前の琥珀に閉じこめられていたオスのホタルを、新しい属と種「クレトルキオラ・ビルマナ(Cretoluciola birmana)」と名づけました。大きな目と糸のような触角をもち、腹部には2つに分かれた発光器がありました。ホタル科の「ルキオラ亜科」に入ることが確かめられた、白亜紀の化石の初めての例とされています。

同じころの琥珀からは、ホタルに近い、絶滅したなかまの化石も見つかっています。2026年に報告された「イカロラムス・ペリシ(Icaroramus perisi)」は、12の節からなり、複雑に枝分かれした、ほかの甲虫では知られていない形の触角をもっていました。よく発達した発光器もありましたが、相手さがしにはおもににおい(フェロモン)を使い、光は敵への警告に使っていた可能性があると考えられています。

ナゾロジーでくわしく恐竜時代の琥珀から「光るホタルの新種化石」を発見

大きさと体のつくり(どこが光る?)

成虫の体長は、種によって数mmから30mmほどです。日本の代表的な種では、ゲンジボタルが15mm前後、ヘイケボタルが8mm前後、ヒメボタルが7mm前後です。南西諸島にいるマドボタルのなかまには、メスの体長が3cmをこえる種もいます。

  • 体の形:前後に細長く、平たい形です。頭の後ろの「前胸」が平たく張り出していて、頭をおおっていることが多いです。全体が黒っぽく、前胸だけが赤いという色の種がよく見られます。
  • オスとメス:メスのほうが大きいことが多いです(ヒメボタルのように、メスのほうが小さい種もいます)。メスの翅が退化して飛べない種や、幼虫のような姿のままの種もいます。
  • 触角:光で合図をする種の触角は細い糸のような形ですが、においの物質(フェロモン)を使う種では、のこぎりの歯やくしの歯のような形のものもいます。
  • 発光器(光る所):光る種の成虫は、腹部の後ろのほうの決まった節に発光器をもっています。たとえばゲンジボタルでは、オスは腹部の第6節と第7節が、メスは第6節だけが光ります。幼虫は、多くが腹部の先のほうに発光器をもっています。
白い背景に並んだ茶色のホタル2匹。右の1匹はおなか側を見せていて、腹部の先に白っぽい黄緑色の部分がある
ホタルを背中側とおなか側から見たところ写真: Aaron Pomerantz(The Next Gen Scientist)(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

発光器では、表皮の近くにある「発光層」で光が生まれ、その下には光をはね返す「反射層」があります。発光器の場所は、種によっても、同じ種のオスとメスでもちがいます。

白い壁にとまる、黒い翅とピンク色の前胸をもつホタルを背中側から見たところ
背中から見たゲンジボタル(愛知県小牧市)写真: KKPCW(Kyu3)(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

ヨーロッパで glowworm(グローワーム)と呼ばれるホタル(ランピリス・ノクティルカ)では、オスには翅がありますが、メスは翅がなく、幼虫のような姿をしています。強く光るのは飛べないメスで、飛ぶオスの光は弱く、とぎれがちです。メスは光でオスを呼びます。

どこにいる? いつ見られる?(日本のホタル)

ホタルは、極地や砂漠などの乾いた土地をのぞく、世界中に分布しています。温帯から熱帯にかけて、多くの種が、幼虫のえさが豊富な湿地や湿った林にすんでいます。台湾だけでも60種以上がいます。

幼虫が水の中でくらす「水生ホタル」は、ホタル全体の中では少数派です。そのうちゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマボタルの3種が日本にいます。ホタル全体で見ると、幼虫が陸でくらす種のほうがふつうです。

日本では50種ほどのホタルが確認されていますが、その多くは南西諸島にすんでいます。本州・四国・九州では、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタル、クロマドボタル、オバボタルなどが見られます。

ゲンジボタル(源氏蛍)

日本で「ホタル」といえば、ふつうゲンジボタルを指すほど、よく知られた種です。日本にしかいない固有種で、本州(青森県から南。東北や関東もふくむ)、四国、九州などに分布します。北海道や伊豆諸島の八丈島には、人の手で持ちこまれています。幼虫は、水のきれいな川の、流れのゆるい所でくらします。オスは川の上を飛び回りながら、メスは川辺の草の上などにとまって光ります。

山の稜線が見える暗い夜景の中、草木のまわりに黄緑色の光の線がたくさん写っている
夜の山里を飛ぶゲンジボタル(山口県下関市)写真: nanamori(CC BY 3.0) / Wikimedia Commons

ヘイケボタル(平家蛍)

ゲンジボタルより小さく、体長は8mm前後です。水田や湿原など、水の流れがほとんどない場所をおもなすみかにしていて、少し汚れた水にもすめます。北海道、本州、四国、九州、対馬のほか、東シベリアや朝鮮半島にも分布します。オスは、ゲンジボタルより速いテンポで、星がまたたくように光ります。

ヒメボタル(姫蛍)

体長7mm前後の小さなホタルで、幼虫は陸でくらし、カタツムリなどの陸の貝を食べます。日本の固有種で、本州から九州、屋久島に分布します。おもに森の中で光るため、ゲンジボタルやヘイケボタルにくらべると、あまり知られていません。光は黄色みをおび、歯切れよく点滅します。メスは後ろの翅が退化していて飛べません。

暗い杉林の地面いっぱいに、黄色い小さな光の点が散らばっている
森の中で光るヒメボタル(千葉県)写真: F_Photo(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons

何月・何時ごろ見られる?

ゲンジボタルの成虫は、ふつう5月から7月にかけて現れます。九州では5月上旬から、東北では7月ごろから羽化するなど、地方によって時期がちがいます。たとえば北九州市では、5月中旬から6月下旬ごろに飛び、平地では6月初めごろに数がいちばん多くなります。ヘイケボタルは成虫の出る期間が長く、5月から9月ごろまで光が見られます。ヒメボタルは5〜6月に羽化します。

日本ではホタルは初夏の風物詩とされますが、夏だけの虫ではありません。対馬などにいるアキマドボタルは秋に、南西諸島のヒゲボタルのなかまは秋から冬に成虫が現れます。

ゲンジボタルがいちばん活発に飛ぶのは、日没後から1時間ほどの間です。北九州市では、午後8時から9時ごろにいちばん多く見られます。雨の日や風の強い日はうまく飛べず、草かげなどでじっとしていて、あまり光りません。

何を食べる? 一生と寿命

幼虫は巻貝などをとらえて食べる

ホタルの幼虫は、ほかの小さな動物をとらえて食べます。多くの種の幼虫は湿った森の地面でくらし、カタツムリやキセルガイなどの陸の巻貝、ミミズ、ヤスデなどを食べます。

植物の茎にぶら下がるように、白と黒のしま模様の細長い幼虫が、小さなカタツムリにかぶりついている
カタツムリを食べるアマミマドボタルの幼虫(徳之島)写真: Mmsmr(CC0) / Wikimedia Commons

日本のゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマボタルの幼虫は水の中でくらし、カワニナやモノアラガイ、タニシなどの淡水の巻貝を食べます。ただし、ホタル全体で見ると、こうした水の中の巻貝を食べる種は少数派です。ゲンジボタルの幼虫は、カワニナを見つけると肉の部分にかみつき、消化液を出して肉をとかしながら食べます。ヘイケボタルの幼虫は、カワニナだけでなく、いろいろな巻貝を幅広く食べます。

成虫はほとんど食べない(なぜすぐ死ぬ?)

成虫でいられる期間は短く、1〜2週間から数週間ほどです。多くの種の成虫は口が退化していて、水分をとる程度のはたらきしかありません。そのため、幼虫のころにたくわえた栄養だけで、相手を見つけて子孫を残します。ただし、海外には、成虫になってもほかの昆虫などを食べる種や、花粉や花の蜜を食べる種もいます。

卵から成虫まで(ゲンジボタルの一生)

ホタルは、卵 → 幼虫 → さなぎ → 成虫と、すがたを大きく変えて育つ(完全変態の)昆虫です。ゲンジボタルは、1年ほどかけて次のように育ちます。

  • 卵:交尾を終えたメスは、川岸の木や石に生えたコケの中に卵を産みます。卵の中で育つと、幼虫が卵の中で光りはじめます。
  • 幼虫:夏にかえった幼虫は、すぐに川に入り、流れのゆるい所でカワニナを食べて育ちます。秋と冬をこし、春には体長2〜3cmほどと、成虫より大きくなります。
  • さなぎ:春、育ちきった幼虫は、雨の夜に川岸へ上陸します。やわらかい土にもぐり、まわりの泥を固めたまゆを作って、その中でさなぎになります。さなぎも光ります。
  • 成虫:5月から6月にかけて成虫になり、夜に活動して、昼は草かげで休みます。成虫の期間は2〜3週間ほどです。
白っぽい容器の中にいる、黒っぽい節の並んだイモムシのような幼虫
ゲンジボタルの幼虫(和歌山県田辺市)写真: Keisotyo(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

世界のホタルを見ると、多くの種は幼虫のすがたで冬をこします。幼虫の期間は、種によって数週間から2年以上とさまざまです。

なぜ光る?(光るしくみと、光の始まり)

光るしくみ(ルシフェリンとルシフェラーゼ)

ホタルの光は、体の中の化学反応で生まれます。発光器の中で、「ルシフェリン」という物質が、「ルシフェラーゼ」という酵素のはたらきで酸素と反応すると、光が出ます。この反応には、生き物がエネルギーとして使う物質「ATP」と、マグネシウムも必要です。酸素は、腹部の気管から送りこまれます。

ルシフェリンとルシフェラーゼという名前は、光る甲虫(ヒカリコメツキ)を調べたラファエル・デュボアがつけたものです(1883年に始まった研究)。

ホタルは体の中の化学反応で光を出し、そのとき熱をほとんど出しません。そのため「冷光」と呼ばれます。光の色は種によってちがい、緑から黄緑、黄色、オレンジがかった黄色まであります。光る甲虫のルシフェリンは同じ物質と考えられていて、色のちがいは、ルシフェラーゼの形のちがいで決まります。

ホタルのルシフェラーゼは、ATPがあると光ることから、ごく少ないATPを見つける検査に使われ、微生物を見つけることなどに役立っています。また、ルシフェラーゼの遺伝子を細胞や動物に組みこみ、生きたまま体の中のようすを光で調べる実験にも広く使われています。

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はじめは「食べるとまずいぞ」の合図だった?

ホタルが光るようになったのは、もともと、幼虫が「食べるとまずい」ことを敵に知らせる警告のためだったと考えられています。一部のホタルは、ヒキガエルの毒と同じなかま(ブファジエノライド)の「ルシブファギン」という物質をもっていて、背骨のある動物(脊椎動物)にとってまずいのです。この光の合図が、のちに成虫どうしの求愛の合図にも使われるようになったと考えられています。

ホタルに体の色が似た、ほかの昆虫もいます。ホタルに似た体の色をした昆虫もいて、ホタルガやホタルカミキリなどがその例です。

ホタルの毒を利用するヘビ

ホタルの毒は、ほかの動物にも利用されています。ヤマカガシのなかま(ヤマカガシ属)のヘビの多くは、首や背中の皮ふにある腺に、ヒキガエルや一部のホタルがもつ「ブファジエノライド」という毒をためて身を守ります。日本のヤマカガシは、この毒をえもののヒキガエルからとり入れています。一方、中国などにすむ、おもにミミズを食べるなかまのヘビは、ホタルの幼虫を食べて毒を手に入れていることが、2020年に報告されました。

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最初のホタルの光は何色?

昔のホタルの光の色は、化石からはわかりません。そこで中部大学などの研究チームは、今のホタルのルシフェラーゼの遺伝子をもとに、祖先のルシフェラーゼを計算で予想し、実際に作って光らせました(2020年の研究)。

その結果、今のホタル全体の共通の祖先がもっていたルシフェラーゼは、緑色に光りました。それより古い、ホタルと、ホタルに近い光る甲虫(フェンゴデス科・オオメボタル科)との共通の祖先のものはオレンジ色、さらに古い、コメツキムシ上科の共通の祖先のものは赤っぽい光を出しました。ホタルの共通の祖先は約1億年前に現れ、その光は、夜に活動する敵への警告だった可能性が高いと考えられています。

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ホタルが光るようになったしくみは、遺伝子からも調べられています。2018年には、北アメリカのフォティヌス・ピラリスと、日本のヘイケボタルのゲノム(全遺伝情報)が解読されました。ルシフェラーゼは、脂肪酸を処理する酵素の遺伝子がコピーされてできたと考えられています。また、同じように光るヒカリコメツキ(コメツキムシのなかま)とホタルは、それぞれ別々に光る力を手に入れたと考えられています。

黒い背景の中、翅を広げて飛ぶホタル。腹部の先が明るい黄緑色に光っている
光りながら飛ぶフォティヌス・ピラリス(北アメリカ)写真: Terry Priest(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

洞窟の「ツチボタル」はホタルじゃない

ニュージーランドやオーストラリアの洞窟の天井で、星空のように青白く光る「ツチボタル(グローワーム)」は、ホタルではありません。ハエのなかま(ハエ目)の「ヒカリキノコバエ」の幼虫です。幼虫は、粘液のついた糸を天井から何本も垂らし、自分の光に寄ってきた虫をからめとって食べます。糸の長さはふつう20〜30mmで、長いものでは30〜40cmにもなります。

日本では、陸でくらすマドボタルなどのホタルの幼虫も、「土蛍(つちぼたる)」と呼ばれることがあります。

暗い森の中で、青く光る小さな点から、しずくのついた細い糸が何本も垂れ下がっている
ツチボタル(ヒカリキノコバエの幼虫)は、ホタルではない写真: Pseudopanax(英語版ウィキペディア)(Public domain) / Wikimedia Commons

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光で話す(点滅の合図・シンクロ・だまし)

夜に活動するホタルの多くは、光をオスとメスの合図に使います。ふつうはオスが飛び回りながら光ってメスを探し、メスはあまり動かずに光で答えます。光の長さやタイミング、色、くり返す回数や速さ、飛ぶ高さや飛び方などは種ごとにちがっていて、ホタルはそれで同じ種の相手を見分けています。

暗い夜の草むらで、細い草の穂にとまり、おしりのあたりを黄緑色に光らせている黒いホタル
草の上で光るホタル写真: yb_woodstock(CC BY-SA 2.0) / Wikimedia Commons

ゲンジボタルの点滅は、西と東でちがう

ゲンジボタルの点滅の間かくは、地域によってちがいます。西日本では2秒ごと、東日本では4秒ごとに光り、西日本のほうがテンポが速いのです。境目はフォッサマグナの西の縁のあたりで、その付近には中間の型もいます。長崎県の五島列島には1秒ごと、熊本県の天草には3秒ごとに光るゲンジボタルがいることも報告されています。遺伝子を調べると、九州型(2秒ごと)をふくむ3つほどの地域のグループに分かれることがわかっています。

ただし、2024年にNHKを通して全国から集めた観察では、西日本は2秒・東日本は4秒という傾向はあったものの、かなり入りまじっていました。よその地域のホタルを持ちこんで放したことの影響なのか、まわりのホタルに点滅のタイミングを合わせたためなのかは、まだはっきりしていません。

ヘイケボタルの「またたき」

2023年の研究では、愛知県の知多半島北部の水田で、ヘイケボタルの光をビデオで撮って調べました。草にとまっているヘイケボタルの光は、オス、まだ交尾していないメス、交尾をすませたメスで、光る長さと「またたき」(光の強さの細かなゆらぎ)の強さがちがい、ほとんど重ならずに見分けられました。メスは交尾をすませると、短い光から、長くてまたたきのある光に変わります。

研究チームは、LEDで光り方を変えられる人工のホタル「電子ボタル(e-firefly)」を作り、野外でオスが寄ってくるかを試しました。すると、オスは、光る時間が短く、またたきの小さい光に引き寄せられました。オスは、光る長さだけでなく、またたきの強さでも相手を見分けているとみられます。

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いっせいに光るホタル

たくさんのオスが、光るタイミングをそろえて、いっせいに点滅する種もいます。東南アジアのマングローブ地帯では、1本の木に集まったホタルがいっせいに光ることで有名です。北アメリカのグレートスモーキー山脈では、毎年6月の初めごろ、フォティヌス・カロリヌスというホタルのオスが、群れでいっせいに光ります。ゲンジボタルでも、限られた範囲ですが、集団で光をそろえることがあります。

暗い森の中に、黄色い光の点や短い線がたくさん写っている
いっせいに光るフォティヌス・カロリヌス(アメリカ)写真: Niemand für Polyphemus(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

2020年の研究では、360度カメラを組み合わせて使い、フォティヌス・カロリヌスの光を立体的に記録しました。数匹のオスでも光はそろいましたが、光のかたまりが周期的にくり返される光り方は、オスが15匹より多い群れでしか見られませんでした。群れの光り方は、オスどうしのやりとりから生まれる、集団としてのふるまいと考えられています。

光をそろえる理由の一つとして、オスがいっせいに暗くなる間に、メスの返事の光を見つけやすくするため、という説があります。

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光をまねて、ホタルを食べる

北アメリカのフォトゥリス属のホタルのメスは、別の属(おもにフォティヌス属)のメスの光り方をまねて、そのオスをおびき寄せて食べてしまいます。「ファム・ファタール(運命の女)」とも呼ばれます。1997年の研究では、このメスは、食べたオスから、自分では作れない防御用の物質(ルシブファギン)を手に入れ、ハエトリグモに食べられにくくなることがわかりました。

ホタルの光の合図を利用するクモもいます。2024年の研究によると、オニグモの巣にかかったアブスコンディタ・テルミナリスというホタルのオスは、ふだんのオスの光ではなく、メスのような光を出していました。その光に引き寄せられて、さらに多くのオスが巣にかかっていたのです。クモが、とらえたオスに、メスのような光を出させているとみられています。

なぜ減った?(ホタルを守るには)

日本のホタルは、年々数が減っているとされます。国の「第2回自然環境保全基礎調査」の報告書(1982年)では、ホタルが減った原因として、農薬の使用、汚れた水の流れこみ、工事による土砂の流れこみ、川の砂利とり、川や用水路の改修などがあげられています。里山が手入れされなくなったことも、大きな原因とされます。

ゲンジボタルでは、川が汚れて幼虫やカワニナがすめなくなることが大きな原因の一つです。それだけでなく、川岸を護岸でおおってしまうと、幼虫がさなぎになれません。ヘイケボタルも、水田への農薬散布や水田まわりの環境の変化で、すむ場所がせばめられています。

ホタルが減っているのは日本だけではありません。2020年に発表された、世界の専門家への調査では、ホタルにとって特に深刻な脅威として、すみかが失われること、光害(夜の人工の明かり)、農薬の使用があげられました。アメリカでは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストの評価で、18の種などが絶滅のおそれがあるとされています。

ホタルは光で合図を送り合うため、夜の明かりの影響を受けやすいと考えられています。人工の光が、求愛の合図をじゃましたり、幼虫の移動をさまたげたりすることもわかってきました。ホタルを見に行くときは、懐中電灯や車のライトをホタルに向けないことが大切です。明るい光を当てると、ホタルは光るのをやめてしまいます。

よその地域のホタルを放すのは問題

ホタルを増やそうとして、業者から買ったホタルや、よその地域のホタル、えさのカワニナを放すことがあります。しかし、ゲンジボタルは1つの種ですが、地域ごとに遺伝的な特徴や光り方がちがいます。よその地域のゲンジボタルやカワニナを放すと、「遺伝子汚染」を引き起こすため、行うべきではないとされています。たとえば、ゲンジボタルの名所として知られる長野県辰野町の松尾峡のゲンジボタルは、近畿地方から持ちこまれたもので、もとからいたゲンジボタルとは光る周期も遺伝子もちがうことが報告されています。

ゲンジボタルを守るには、水をきれいにするだけでなく、親が卵を産み、幼虫がさなぎになるために上陸する岸辺や、成虫が休む川のまわりの環境まで整えることが必要とされています。

名前の由来と人とのかかわり

「ホタル」という名前は、光るようすから「火(ホ)を垂(ル)」と呼ばれるようになったとされます。漢字では「蛍」、または「螢」と書きます。ホタルの名は、古くは『日本書紀』や『万葉集』にも見られます。

なぜ「源氏」と「平家」?

ゲンジボタル(源氏蛍)の名前には、いくつかの説があります。平家に敗れた源頼政が、亡霊になってホタルとなって戦ったという伝説に由来するという説や、腹部が光ることを『源氏物語』の主人公・光源氏にかけたという説です。より小さいヘイケボタル(平家蛍)は、源氏と対比して名づけられたといわれます。

ホタル狩りと、ことば

日本では、ゲンジボタルの成虫が初夏に現れることから、ホタルは夏の風物詩とされ、夜にホタルの光を楽しむ「ホタル狩り」が行われてきました。江戸時代には、大名が地元のホタルを将軍に献上する「献上蛍」という行事もありました。「ホーホー蛍来い こっちの水は甘いぞ」という歌がありますが、ホタルが砂糖水のような甘い水を好んで集まるわけではありません。

夜の川と木々をえがいた浮世絵。明かりのともる小舟のまわりに、小さな黄色い光の点が散らばっている画像はイメージです
小林清親「御茶ノ水蛍」(1880年ごろ)写真: 小林清親(ロサンゼルス・カウンティ美術館所蔵)(Public domain) / Wikimedia Commons

ホタルは和歌や俳句にもよく詠まれ、ホタルの光を指す「蛍火」は季語の一つです。芭蕉の「己が火を木々に蛍や花の宿」や、一茶の「大蛍 ゆらりゆらりと 通りけり」などがあります。夏はホタルの光で、冬は雪明かりで勉強したという中国(東晋)の故事から生まれた「蛍雪の功」という言葉もあります。

「蛍光」や「蛍光灯」という言葉も、ホタルの光が熱を出さないことからきています。ホタルは光る生き物の代表とされ、ホタルイカやウミホタルのように、光る生き物の名前にもよく使われています。

海外でもホタルは古くから親しまれ、14世紀のイタリアの詩人ダンテの『神曲』地獄篇にも、夏の夕暮れに谷を飛ぶホタルが登場します。一方、アメリカのグレートスモーキー山脈など、いっせいに光るホタルが見られる場所には、毎年たくさんの観光客が集まります。ホタル観光は、うまく管理しないと、ホタルやそのすみかをおびやかすおそれがあるとも指摘されています。

よくある疑問

ホタルは何科? 何の仲間? 英語では何という?
ホタルは甲虫(コウチュウ目)のなかまの昆虫で、「ホタル科」にまとめられます。世界に2,000種以上がいて、日本では50種ほどが確認されています。英語では firefly(ファイアフライ)のほか、lightning bug や glowworm とも呼ばれます。
ホタルはなぜ光る? どこが光るの?
腹部の後ろのほう(おしりのあたり)にある発光器で、「ルシフェリン」という物質が「ルシフェラーゼ」という酵素のはたらきで酸素と反応して光ります。光は、オスとメスが出会うための合図や、「食べるとまずいぞ」という敵への警告に使われます。熱をほとんど出さない光なので「冷光」と呼ばれます。
ホタルは何月・何時ごろに見られる?
ゲンジボタルはふつう5月から7月ごろで、九州では5月上旬から、東北では7月ごろから羽化します。ヘイケボタルは5月から9月ごろまで光が見られます。ゲンジボタルがいちばん活発に飛ぶのは日没後から1時間ほどで、北九州市では午後8時から9時ごろにいちばん多く見られます。雨や風の強い日はあまり飛びません。
ホタルは何を食べる?
幼虫は肉食で、ゲンジボタルやヘイケボタルの幼虫は水の中でカワニナなどの巻貝を、陸でくらす多くの種の幼虫はカタツムリなどの陸の貝やミミズを食べます。多くの種の成虫は口が退化していて、水分をとる程度しかできません。
ホタルの寿命は? 成虫はなぜすぐ死ぬの?
成虫でいられる期間は、1〜2週間から数週間ほどです(ゲンジボタルでは2〜3週間ほどとされます)。多くの種の成虫は口が退化していて水分をとる程度しかできず、幼虫のころにたくわえた栄養だけで子孫を残すためです。ゲンジボタルは、卵から成虫になるまでに1年ほどかかります。
ホタルはどこにいる? 日本のどこで見られる?
極地や砂漠などをのぞく世界中にいて、湿地や湿った林に多くすんでいます。日本では、ゲンジボタルが本州・四国・九州の水のきれいな川に、ヘイケボタルが北海道から九州の水田や湿原に、ヒメボタルが本州から九州の森の中にすんでいます。日本のホタルの多くの種は、南西諸島にすんでいます。
ホタルはなぜ減ったの?
すむ場所がこわされたり汚れたりしたことが大きな原因です。農薬の使用、汚れた水の流れこみ、川の改修や護岸工事、里山の手入れ不足などがあげられています。夜の人工の明かり(光害)も、ホタルの光の合図をじゃまします。
ゲンジボタルとヘイケボタルの名前の由来は? どうちがうの?
ゲンジボタルの名前は、源頼政がホタルになって戦ったという伝説や、光源氏にかけたという説があり、より小さいほうが源氏と対比して「平家蛍」と名づけられたといわれます。ゲンジボタルは体長15mm前後で、きれいな川にすみ、日本の固有種です。ヘイケボタルは8mm前後と小さく、水田などにすみ、東シベリアや朝鮮半島にもいます。

ナゾロジーで読む10本

  1. 01 ”前例のない触角”をもつ「1億年前」のホタル近縁種、琥珀から発見
  2. 02 恐竜時代の琥珀から「光るホタルの新種化石」を発見
  3. 03 「男の娘で美人局⁉」蛍の求愛信号を利用したクモの恐るべき採餌戦略
  4. 04 ホタルはミリ秒単位の光の「またたき」までちゃんと会話になっていた!
  5. 05 ホタルの光はもともと「赤色」だった! 1億年以上前からの色の変遷を解明

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参考文献

  1. Yuan S ほか (2026) A true Luciolinae fossil from the mid-Cretaceous Burmese amber provides new insights into the early evolution of fireflies (Coleoptera: Lampyridae). Proceedings of the Royal Society B
  2. Li Y-D ほか (2026) A firefly relative that smelled and glowed: evidence for complex signalling systems in Cretaceous lampyroids. Proceedings of the Royal Society B
  3. Oba Y ほか (2020) Resurrecting the ancient glow of the fireflies. Science Advances
  4. Fallon TR ほか (2018) Firefly genomes illuminate parallel origins of bioluminescence in beetles. eLife
  5. Yoshida T ほか (2020) Dramatic dietary shift maintains sequestered toxins in chemically defended snakes. Proceedings of the National Academy of Sciences
  6. Takatsu H, Minami M, Oba Y (2023) Flickering flash signals and mate recognition in the Asian firefly, Aquatica lateralis. Scientific Reports
  7. Sarfati R ほか (2020) Spatio-temporal reconstruction of emergent flash synchronization in firefly swarms via stereoscopic 360-degree cameras. Journal of the Royal Society Interface
  8. Eisner T ほか (1997) Firefly “femmes fatales” acquire defensive steroids (lucibufagins) from their firefly prey. Proceedings of the National Academy of Sciences
  9. Fu X ほか (2024) Spiders manipulate and exploit bioluminescent signals of fireflies. Current Biology
  10. Lewis SM ほか (2020) A Global Perspective on Firefly Extinction Threats. BioScience
  11. 北九州市「ホタル鑑賞のポイント(注意点)」
  12. Wikipedia「ホタル」(日本語版)
  13. Wikipedia「Firefly」(英語版)
  14. Wikipedia「ゲンジボタル」(日本語版)
  15. Wikipedia「ヘイケボタル」(日本語版)
  16. Wikipedia「ヒメボタル」(日本語版)
  17. Wikipedia「ヒカリキノコバエ」(日本語版)
  18. Wikipedia「Arachnocampa」(英語版)
  19. Wikipedia「ルシフェラーゼ」(日本語版)
  20. Wikipedia「Firefly luciferase」(英語版)
  21. Wikipedia「生物発光」(日本語版)
  22. Wikipedia「Photinus carolinus」(英語版)
  23. Wikipedia「Photuris」(英語版)
  24. Wikipedia「Lampyris noctiluca」(英語版)
  25. Wikipedia「ヤマカガシ」(日本語版)
  26. Wikipedia「カワニナ」(日本語版)
  27. Wikidata「ホタル Lampyridae」(Q25420)

表紙の写真: yb_woodstock(CC BY-SA 2.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。