青むらさき色の花に顔をうずめて蜜を吸う、茶色と黒のしま模様のミツバチ No.0017

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

ハチ

Hymenoptera(アリ科を除く)

ミツバチもスズメバチも、アリと同じハチ目のなかま。
針はもともと、卵を産むための管でした。

ナゾロジーの記事
78本
ハチ目のなかま(アリもふくむ)
15万種以上
スズメバチを蒸し殺す蜂球の中の温度
46℃

ハチは、昆虫のハチ目(膜翅目)のうち、アリをのぞいたなかまの呼び名です。花の蜜を集めるミツバチやマルハナバチ、虫を狩るスズメバチ、ほかの虫に卵を産む寄生バチなどがいます。毒針はもともと卵を産む管で、刺すのはふつうメスだけです。

図鑑データ

分類
昆虫 › ハチ目(膜翅目)のうち、アリ科をのぞいたもの
学名
Hymenoptera(ハチ目。ギリシャ語の「膜」と「翼」から)
英名
bee(ハナバチ)、wasp(カリバチなど)、hornet(大型のスズメバチ)などと呼び分ける
なかま
ハチ目全体(アリをふくむ)で15万種以上。ハナバチだけで2万種以上
大きさ
体長0.139mmほどの寄生バチ(オス)から、5〜6cmほどになる種まで
すみか
南極大陸をのぞく世界各地(北極圏のツンドラにすむマルハナバチもいる)
日本では
在来のスズメバチ16種(ほかに外来のツマアカスズメバチ)、アシナガバチ12種、ハナバチ400種以上など
食べもの
成虫は花の蜜や樹液など。幼虫は、花粉と蜜(ハナバチ)、虫の肉(狩りバチ)、ほかの虫の体(寄生バチ)、植物の葉(ハバチ)など
針
産卵管が変化したもの。刺すのはふつうメスだけ
増え方
卵 → 幼虫 → さなぎ → 成虫(完全変態)。ふつう受精卵はメス、未受精卵はオスになる(例外もある)
くらし
群れ(コロニー)をつくるのは一部で、多くの種は1匹でくらす
寿命
セイヨウミツバチの働きバチは、春〜夏生まれで数週間、秋生まれで数か月。女王は数年

ハチとは(アリと同じハチ目のなかま)

ハチは、昆虫の「ハチ目(もく)」(膜翅目〈まくしもく〉ともいいます)のうち、アリをのぞいたなかまをまとめた呼び名です。ミツバチ、スズメバチ、アシナガバチ、マルハナバチのほか、ほかの虫に卵を産みつける寄生バチや、植物を食べて育つハバチもふくまれます。日本語では「ハチ」とまとめますが、英語では bee(ハナバチ)、wasp(カリバチなど)、hornet(大型のスズメバチ)などと呼び分けます。

ハチ目には、アリもふくめて15万種以上が知られています(13万種とする資料もあります)。アリは、針をもつハチのなかまから枝分かれしたグループで、分類のうえではハチ目の中の1つの科(アリ科)です。ハチは、南極大陸をのぞく世界各地にすんでいます。北極圏のツンドラでくらすマルハナバチもいます。

青むらさき色の花に顔をうずめて蜜を吸う、茶色と黒のしま模様のミツバチ
青い花にとまるセイヨウミツバチ写真: Clément Bardot(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

ハチ目は、大きく2つに分けられます。胸と腹の間がくびれていない「ハバチ亜目」と、くびれのある「ハチ亜目」です。ハチ亜目には、ほかの虫に卵を産む「寄生バチ」、虫を狩る「狩りバチ」、花の蜜や花粉を集める「ハナバチ」がいて、アリもこちらに入ります。

はじめのハチは、ハバチのように植物を食べていたと考えられています。そこから寄生バチが生まれ、寄生バチから狩りバチが、虫を狩るハチからハナバチが進化しました。2023年の研究は、ハナバチが生まれたのは白亜紀のはじめごろ(1億2,000万年あまり前)で、場所はアフリカと南アメリカがまだつながっていた大陸(西ゴンドワナ)だったとしています。

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刺すハチは、ほんのひとにぎり

「ハチは刺す」というイメージがありますが、実際に刺すハチはごく一部です。毒針をもつのは、ハチ亜目のうち「有剣類(ゆうけんるい)」と呼ばれるグループで、ふつうはメスだけです。また、群れ(コロニー)をつくってくらすハチは少数派で、ハチ目のうち集団で生活する種は1割ほどです。ハナバチでも9割以上の種は1匹でくらし、人を刺すことはめったにありません。

大きさと体のつくり(針はもともと卵を産む管)

ハチの大きさはさまざまです。ホソハネコバチ科の寄生バチ Dicopomorpha echmepterygis のオスは、体長0.139mmほどしかありません。知られている昆虫の中でも、とりわけ小さなものです。大きいほうでは、オオスズメバチの女王が体長4〜5cmほど、クモを狩るタランチュラホークのなかまや、ツチバチの一種 Megascolia procer は5〜6cmほどになります。

ハチの体には、次のような特徴があります。

  • 翅(はね):多くのハチには、うすい膜のような翅が2対、4枚あります(翅のない種類もいます)。後ろの翅は前の翅より小さく、ふちに並んだ小さなかぎで前の翅とつながって、いっしょに動きます。
  • くびれ:ハチ亜目では、腹の1節目と2節目の間が細くくびれています。腹を自由に動かせるようになり、動くえものにも卵を産みつけやすくなったと考えられています。
  • 口:かむための大あごが発達しています。ハナバチは、花の奥の蜜を吸うための長い口も発達させています。
  • 育ち方:卵 → 幼虫 → さなぎ → 成虫と姿を変える「完全変態」です。ハチ亜目の幼虫には、ふつう脚がありません。
黒い背景の前で横を向いた、オレンジ色の頭と黄色と黒のしま模様の腹をもつ大きなハチ
オオスズメバチの標本(横から)写真: USGS Bee Inventory and Monitoring Lab(Public domain) / Wikimedia Commons

ハチの毒針は、もともと卵を産むための「産卵管」でした。寄生バチは、長い産卵管をほかの虫の体などにさしこんで卵を産みます。有剣類では、この管が毒を注射する針に変わり、卵は針の先ではなく根もとから産むようになりました。そのため、刺すのはふつうメスで、オスは毒針をもちません。

木の表面にとまる、赤茶色と黄色の細長いハチ。腹の先から長い糸のような管がのびている
長い産卵管をもつ寄生バチ写真: Bruce Marlin(CC BY-SA 2.5) / Wikimedia Commons

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黄色やオレンジ、赤と黒のしま模様は、「刺すぞ」と天敵に知らせる警告の色だと考えられています。刺さない虫の中にも、ハチそっくりの色や形をして身を守るものがいます。

ハチはなぜ飛べる?(「マルハナバチは飛べない」の誤解)

体のわりに翅が小さいマルハナバチは、「計算では飛べないはず」といわれたことがあります。これは1930年代に、飛行機の動かない翼のための計算を、すばやく羽ばたく昆虫の翅にそのまま当てはめたことから広まった誤解です。実際には、翅の前のふちにできる空気のうず(前縁渦)などによって、体を浮かせる力を生み出していることが分かっています。

日本のハチの種類と見分け方

日本でよく目にするのは、次のようなハチです。

  • スズメバチ:大型で攻撃性の強いものが多いなかまです。日本には在来の16種がいて、2013年には外来種のツマアカスズメバチが対馬に入りこんだことも確かめられています。オオスズメバチは日本最大のハチです。名前は、体が「雀ほどもある」ことか、巣の模様が雀の模様に似ていることに由来するといわれます。
  • アシナガバチ:スズメバチと同じスズメバチ科の、細身のハチです。日本には12種がいます。巣には外側をおおう皮がなく、ハスの実(花托)のような形をしています。スズメバチよりおとなしく、巣を強く刺激したり素手でさわったりしなければ、ふつうは刺してきません。
  • ミツバチ:花の蜜から蜂蜜をつくるハナバチです。日本では、ニホンミツバチと、1877年に持ちこまれたセイヨウミツバチの2種が飼われています。
  • マルハナバチ:丸い体に長い毛が生えたハナバチです。世界に約250種がいて、日本では北海道から九州にかけてすんでいます。性質はおだやかで、自分から人を刺すことはまずありません。
  • クマバチ:体長2cmをこえる、ずんぐりした黒いハナバチです。本州などのクマバチは、胸の黄色い毛が目立ちます。大きな羽音でこわがられますが、性質はとてもおだやかで、オスには針がありません。
黄色い花の房にしがみつく、胸に黄色い毛が生えた、ずんぐりした黒いハチ
花を訪れるクマバチ(キムネクマバチ)写真: Alpsdake(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

このほかにも、日本には400種以上のハナバチがいます。ハナバチ全体で見ると、マルハナバチをのぞく多くの種はミツバチより小さな体をしています。

見分けるときは、体の毛に注目するとよいでしょう。花粉を集めるハナバチの体は、こまかく枝分かれした毛でおおわれていて、花粉がつきやすくなっています。虫を狩るスズメバチなどは毛が少なく、つるっとして見えます。地方によってはスズメバチを「クマンバチ」と呼ぶため、おだやかなクマバチがスズメバチと取りちがえられることがあります。

白い背景の前で横を向いた、黄色と黒の毛におおわれた丸っこいハチ
マルハナバチのなかま(標本)写真: USGS Bee Inventory and Monitoring Lab(Public domain) / Wikimedia Commons

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何を食べる?(花の蜜と、子どものための肉)

ハチの食べものは、なかまによって大きくちがいます。ハバチの幼虫は植物の葉を食べ、寄生バチの幼虫は、ほかの虫の体の内側や外側について、その体を食べて育ちます。寄生バチは、作物を荒らす虫をへらす「天敵」として、ビニールハウスなどでの害虫退治にも使われています。

ハナバチは、ふつう花の蜜と花粉を食べます。蜜はおもに体を動かすエネルギーに、花粉は幼虫が育つためのタンパク質などになります。ミツバチの後ろ足には、花粉をだんごにして運ぶ「花粉かご」があります。

黒い背景の前のミツバチ。後ろ足にオレンジ色の花粉のかたまりがついている
後ろ足に花粉のだんごをつけたミツバチ(標本)写真: USGS Bee Inventory and Monitoring Lab(Public domain) / Wikimedia Commons

ミツバチが蜂蜜をつくるのは、群れの食べものをたくわえるためです。集めた蜜は、ミツバチの体の中の酵素で変えられ、水分がとばされて、くさりにくい蜂蜜として巣にためられます。

ハチは花から花へと飛び回るうちに、体についた花粉を運び、植物の受粉を助けます。人の食べものの3分の1ほどは、昆虫や鳥、コウモリによる受粉にたよっていて、その多くをハチがになっていると見積もられています。

スズメバチやアシナガバチなどの狩りバチは、成虫は花の蜜や樹液などの甘いものもとりますが、幼虫には、つかまえた虫をかみくだいた「肉だんご」を与えます。スズメバチの成虫は、おもに幼虫が口から出す栄養たっぷりの液をもらって栄養にしています。この液には、5〜20%の糖分がふくまれています。

2025年に発表された研究では、中部地方で「蜂の子」として食べられてきたシダクロスズメバチについて、野生と飼育の巣12個の幼虫の腸の中身をDNAで調べました。見つかったえものは324種にのぼり、昆虫やクモのなかまのほか、鳥、哺乳類、爬虫類、両生類、魚もふくまれていました。野生の巣のほうが、飼育された巣よりも、多くの種類の野生の背骨のある動物を食べていました。

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ハチを食べる生き物(天敵)

ハチにも天敵がいます。ハチクイやモズなどの鳥は、飛んでいるハチをつかまえます。タカのなかまのハチクマは、ハチの巣をおそって幼虫を食べます。花の上で待ちぶせするカニグモやカマキリのほか、トンボやムシヒキアブ、ミツバチをよく狩るハチ(ビーウルフ)もハチをとらえます。哺乳類では、クマやアナグマが巣をこわして、中の幼虫などを食べます。

スズメバチはなぜ危ない?

スズメバチは強い毒をもつものが多く、攻撃性も高いハチです。人を刺すのは、多くの場合、巣を守るためです。何もしていないのにおそわれたように思えるのは、巣の近くにいることに人が気づいていないためです。巣の近くには見はりのハチがいて、10mほどの所まで近づくと、相手のまわりを飛んで敵かどうかを確かめます。大あごをかみ合わせて「カチカチ」と音を立てるのは、最後の警告です。ただし、オオスズメバチやキイロスズメバチは、警告なしに突然おそってくることもあります。

1匹が刺すと、毒液のにおいが「敵が来た」という合図(警報フェロモン)になり、仲間が集まって集団でおそってきます。スズメバチは毒液を空中にまき散らすこともあります。ミツバチとちがって針に大きな返しがないので、何度でも刺すことができます。

シダの葉の上にとまる、オレンジ色の頭と、オレンジと黒のしま模様の腹をもつ大きなハチ
オオスズメバチ写真: Alpsdake(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

とくに注意したいのは秋です。スズメバチの巣は9〜10月ごろにハチの数がいちばん多くなります。オオスズメバチは、えものの虫がへるうえに新しい女王やオスを育てなければならない秋口に、攻撃性がとても高まります。スズメバチはふつう昼に活動し、夜はあまり動きません(モンスズメバチは、日がしずんだあともしばらく活動します)。

スズメバチは、黒いものや動くもの、強いにおいに反応しやすいことが知られています。昼間は黒い色に興奮しやすく、これはクマなどの天敵から巣を守るためだと考えられています。山や野原では、白っぽい服を着て帽子をかぶり、香水などの強いにおいはひかえるのがよいとされます。

ミツバチの反撃「熱殺蜂球」

おそわれる側のニホンミツバチも、負けてはいません。巣に入ってきたスズメバチを、数百匹で玉のように取り囲み(蜂球〈ほうきゅう〉)、飛ぶための筋肉をはげしく震わせて熱を出すのです。玉の中は5分ほどで46℃ほどになり、二酸化炭素も増えます。ミツバチはこの条件でも50℃ほどまで耐えられますが、スズメバチは熱で死んでしまいます。

枯れた葉の上で、たくさんのミツバチが集まってできた、こぶし大の玉
スズメバチを包みこむ「熱殺蜂球」写真: Takahashi(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

2021年の研究では、トウヨウミツバチ(ニホンミツバチはこの種の亜種)の巣が大型のスズメバチにおそわれると、働きバチたちが、これまで知られていなかった警戒の音「アンチプレデター・パイプ」をさかんに出すことが報告されました。この音は、サルや鳥、ミーアキャットの警戒の叫び声と、音の特徴が似ていました。

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ミツバチの社会(女王・働きバチ・8の字ダンス)

ミツバチの巣には、ふつう1匹の女王と、数万匹の働きバチ、そして時期によって数千匹までのオスがいます。働きバチはすべてメスです。群れの大きさは種によってちがい、セイヨウミツバチでは働きバチが5万匹に達することもありますが、ニホンミツバチでは多くても6,000〜7,000匹ほどです。

女王になるか働きバチになるかは、幼虫のときの食べもので決まります。はじめの3日間はどの幼虫もローヤルゼリーをもらいますが、その後もローヤルゼリーだけを与えられつづけた幼虫が、女王に育ちます。女王は、多い時期には1日に2,000個もの卵を産みます。

働きバチの仕事は、年齢とともに変わります。セイヨウミツバチでは、羽化してから10日ほどは巣のそうじと幼虫の世話をし、次に巣づくりをします。16〜20日目ごろには、ほかのハチが集めてきた蜜や花粉を受けとってたくわえ、20日をすぎると巣の外へ出て、蜜や花粉を集めるようになります。

巣が蜜でいっぱいになり、新しい女王が生まれそうになると、もとの女王がたくさんの働きバチを連れて巣を出て、新しいすみかをさがします。これを「分蜂(ぶんぽう)」といいます。

六角形の部屋が並ぶ巣板の上のミツバチたちに、8の字の道すじを示す白い矢印が重ねてある図画像はイメージです
ミツバチの8の字ダンス(図)写真: J. Tautz、M. Kleinhenz(Beegroup Würzburg)/Chittka 2004, PLoS Biology(CC BY 2.5) / Wikimedia Commons

ダンスで花の場所を伝える

えさ場を見つけた働きバチは、巣にもどると、ダンスで仲間にその方向と距離を伝えます。えさ場が遠いときは、おしりを振りながらまっすぐ進んでは、左右に回ってもどる「8の字ダンス(尻振りダンス)」をします。たてに立った巣板の上で、真上に向かって進めば太陽の方向、そこから右へ45°なら、太陽から右へ45°の方向を意味します。振りながら進む時間が長いほど、えさ場は遠くにあります。近いときは、円をえがく「円形ダンス」になります(イタリア系のセイヨウミツバチでは、10mほどまで)。

このしくみを解き明かしたオーストリアの研究者カール・フォン・フリッシュは、1973年にノーベル生理学・医学賞を受けました。

巣はなぜ六角形?

ミツバチの巣板は、働きバチの腹にある「蝋腺(ろうせん)」から出る蜜蝋(みつろう)でつくられます。六角形の部屋をすき間なく並べると、同じ大きさの部屋を、いちばん少ない材料でつくることができ、しかもじょうぶです。部屋の壁の厚さは約0.1mmしかありません。アシナガバチやスズメバチの巣も、木の繊維でつくった六角形の部屋が並んでいます。

ミツバチは、知恵の面でも注目されています。2018年の研究では、ミツバチが、数の並びの中で「ゼロ(何もないこと)」をあつかえることが報告されました。

ナゾロジーでくわしくミツバチが「ゼロ」の概念を理解できると判明。昆虫で初

一年のくらしと寿命(巣づくり・冬ごし)

スズメバチやアシナガバチ、マルハナバチ(温帯の多くの種)の巣は、ふつう1年かぎりです。日本のような温帯で冬をこすのは、ふつう秋に生まれて交尾をすませた新しい女王だけで、朽ち木や土の中などで冬眠します。春に目覚めた女王は、1匹で巣をつくりはじめ、最初の働きバチが育つまでは、えさ集めも子育ても自分でこなします。秋になると新しい女王とオスが生まれ、もとの女王と働きバチ、オスは冬までに死んで、巣は空き家になります。アシナガバチの巣は、一度しか使われません。

葉の落ちた桜の木の幹にくっついた、灰色のうろこ模様の大きな丸い巣
冬のキイロスズメバチの巣写真: Nmspec(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons

巣はいつ、どこにつくる?

巣をつくる場所は、種によってちがいます。オオスズメバチは土の中や木のうろ、家の床下や屋根裏などのとじた空間に、コガタスズメバチは木の枝や植えこみ、軒下などに巣をつくります。キイロスズメバチは、はじめ屋根裏などに巣をつくり、せまくなると軒下や木の枝などへ引っ越すことがあります。アシナガバチは、低い所の乾いた物かげや木の幹などに、4〜5月ごろから巣をかけます。ミツバチは、木のうろや家のすき間、床下など、もとからある空間の中に巣板をつくります。

スズメバチの巣は、枯れ木などからかじりとった繊維をだ液で固めた、紙のような材料でできています。女王が1匹でつくりはじめたばかりの巣は小さく、コガタスズメバチの最初の巣は、とっくりを逆さにつるしたような形をしています。

ミツバチの寿命と冬ごし

ミツバチの働きバチの寿命は、季節によって大きくちがいます。セイヨウミツバチでは、春から夏に生まれた働きバチは数週間ほどで死にますが、秋に生まれた働きバチは、冬の間も巣の中で数か月生きます。女王は数年生き、最長で8年ほどという記録があります。オスは21〜32日ほどです。

2022年の研究によると、アメリカの実験室でかごに入れて飼ったミツバチの働きバチの寿命(中央値)は、1970年代の平均34.3日から、最近は17.7日へと、半分ほどに短くなっていました。研究チームは、この変化が、1群あたりの蜂蜜のとれる量がへってきたことと関係している可能性を示しています。

ミツバチは、冬も群れで生きのびます。気温が10℃ほどより下がると、巣の中で女王を囲むように集まって「冬の玉(ウインタークラスター)」をつくり、体を震わせて熱を出します。玉の中心はあたたかく保たれ、女王がふたたび卵を産みはじめると34℃ほどになります。ためておいた蜂蜜は、冬の間の大切な食べものです。

土の中で冬をこすマルハナバチの女王は、水にも強いようです。2024年の研究では、冬眠させたマルハナバチ(Bombus impatiens)の女王143匹を使った実験で、最長1週間、水の中にしずめても、9割ほどが生きのびました。

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刺されたらどうする? 人とのかかわり

ミツバチの働きバチの針には、大きな返しがあります。人やけもののように、皮ふに弾力のある相手を刺すと、多くの場合針が抜けなくなり、毒の袋や筋肉ごと腹からちぎれ、ハチはその傷がもとで死んでしまいます。ちぎれた針は、しばらく毒を送りこみつづけます。ただし、ほかの昆虫が相手なら何度でも刺せます。女王の針は返しが小さく、マルハナバチなど多くのハチの針にも大きな返しはありません。巣から離れて花の蜜を集めているミツバチは、ふまれたり手荒につかまれたりしないかぎり、めったに刺しません。

人の指先にとまって腹の先の針を刺している、茶色と黒のしま模様のミツバチ
人の指を刺したミツバチ写真: Waugsberg(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

スズメバチに刺されると、すぐに強い痛みがあり、数分後には刺された所がはれてきます。ミツバチの毒で痛みのおもな原因になるのは、メリチンという成分です。

刺されたときの手当ては、次のようにすすめられています。まず、ほかのハチが集まってくることがあるので、静かにその場を離れます。ミツバチの針が残っていたら、できるだけ早く取りのぞきます(つまんでも、こすりとっても、入る毒の量は変わらないとされます)。そのあと傷口を流水で洗い、冷やします。かゆみには、抗ヒスタミン薬やステロイドの塗り薬が使われることがあります。毒を口で吸い出したり、尿をかけたりするのはやめましょう(尿が効くというのは迷信です)。

こわいのは、毒への強いアレルギー反応「アナフィラキシー」です。一度刺されて体が毒に反応しやすくなった人が、ふたたび刺されたときに起こることがあります(2回目に必ず起こるわけではありません)。刺された所以外の皮ふにもかゆみのある赤みが出る、息が苦しい、気分が悪い・吐き気がするといった症状が出たら、すぐに救急車を呼びます。医師の解説では、刺されたあと30分ほどは動き回らずに安静にして、症状が出ないか様子を見ることがすすめられています。

日本では、ハチに刺されて亡くなる人が、近年は1年に15〜20人ほどいます。そのほとんどは、アナフィラキシーによるものと考えられています。

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いっぽうで、ハチは人の暮らしを支えてきました。ミツバチを飼う養蜂は、少なくとも古代エジプトや古代ギリシャの時代から行われ、蜂蜜や蜜蝋がとられてきました。セイヨウミツバチの養蜂では、決まった形の巣箱が使われます。今では、蜂蜜よりも作物の受粉のためにミツバチを使う仕事のほうが大きくなっている国も多くあります。スズメバチやアシナガバチも、作物を食べるイモムシなどをたくさん狩るので、農業では役に立つ「益虫」の面があります。日本の中部地方などでは、クロスズメバチの幼虫やさなぎを「蜂の子」「へぼ」などと呼んで食べる文化もあります。

心配されているのは、ハチが少なくなることです。野生のハナバチは、1970年代から種の数がへってきていると報告されています。原因として、寄生虫や病気、農薬、野の花がへったことなどが挙げられています。飼われているミツバチでも、アメリカでは2006〜2007年ごろ、女王や食べものを残したまま働きバチの大半が巣から姿を消す「蜂群崩壊症候群」が注目されました。ダニや病原体、ネオニコチノイド系などの農薬が、原因として指摘されています。

よくある疑問

ハチはなぜ刺すの?
多くの場合、巣や自分の身を守るためです。毒針はもともと卵を産むための産卵管が変わったもので、刺すのはふつうメスだけです。また、ハチの中で毒針をもつのは一部のグループだけで、多くのハチは人を刺しません。
ハチは何もしなければ刺さない?
アシナガバチやマルハナバチ、クマバチはおとなしく、ふつうは巣を強く刺激したりつかんだりしなければ刺しません。スズメバチも、人を刺すのは多くの場合巣を守るためですが、巣に近づいたことに人が気づかずに、何もしていないのにおそわれたと感じることがあります。オオスズメバチやキイロスズメバチは警告なしにおそうこともあるので、巣には近づかないことが大切です。
ミツバチは刺すと死ぬって本当?
人やけものを刺したときは、多くの場合そうなります。働きバチの針には大きな返しがあり、弾力のある皮ふに刺さると抜けなくなって、毒の袋や筋肉ごと腹からちぎれて、ハチはその傷がもとで死にます。ただし、ほかの昆虫なら何度でも刺せます。スズメバチの針には大きな返しがないので、何度でも刺します。
ハチに刺されたらどうすればいい?
静かにその場を離れ、ミツバチの針が残っていたらすぐに取りのぞき、傷口を流水で洗って冷やします。尿をかけるのは迷信です。刺された所以外の皮ふにかゆみのある赤みが出る、息が苦しい、気分が悪いなどの症状が出たら、すぐに救急車を呼びましょう。過去に刺されたことのある人は、とくに注意が必要です。
ハチは何類・何科?
昆虫のなかまで、ハチ目(膜翅目)に入ります。ハチ全体で1つの科ではなく、ミツバチはミツバチ科、スズメバチやアシナガバチはスズメバチ科というように、たくさんの科に分かれています。アリもハチ目の中の1つの科(アリ科)です。
ハチの寿命はどのくらい?
種や立場によってちがいます。セイヨウミツバチの働きバチは、春から夏に生まれると数週間、秋に生まれると数か月です。女王は数年生きます。スズメバチやアシナガバチの女王は、秋に生まれて冬をこし、次の年に巣をつくったあと秋から冬までに死ぬので、1年ほどです。働きバチやオスは、生まれた年のうちに死にます。
ハチは冬どうしているの?
スズメバチやアシナガバチ、マルハナバチ(温帯の多くの種)は、交尾をすませた新しい女王だけが、朽ち木や土の中などで冬眠します。ほかのハチは冬までに死にます。ミツバチは、巣の中で女王を囲んで玉のように集まり、体を震わせて熱を出しながら、ためた蜂蜜を食べて冬をこします。
家にハチが入ってきたり、巣ができたりしたら?
屋内でスズメバチが1匹飛び回っている程度なら、手で払ったり強くつかんだりしないかぎり、刺されることはまずないとされます。体の近くを飛ぶのは、様子を見る警戒の行動です。巣ができたときは、経験のない人が自分で取るのは危険で、専門の業者にたのむのが原則とされます。自治体によっては、スズメバチの巣の駆除の費用を負担したり、防護服を貸し出したりしています。アシナガバチは害虫を食べる益虫でもあるため、駆除を助成しない自治体もあります。

ナゾロジーで読む78本

  1. 01 ミツバチは「鏡の上を飛ぶ」と大変なことになる
  2. 02 女王蜂は農薬を「卵」に押し付けて生き延びると判明
  3. 03 天候で色が変わるコハナバチ、そのメカニズムとは?
  4. 04 「働かないオスバチ」は実は働きバチより頭が柔らかいと判明――なぜなのか?
  5. 05 ニューヨーク墓地の下に「550万匹のハチ」を発見ーー世界最大級のハチ集団か

参考文献

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  29. Wikipedia「Stinger」(英語版)
  30. Wikipedia「Bee sting」(英語版)
  31. Wikidata「ハチ(bees, wasps, and sawflies)」(Q67190085)

表紙の写真: Clément Bardot(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。